4月 13

博士と彼女のセオリー

「博士と彼女のセオリー」を観ました。

評価:★★★

理論物理学の分野で、宇宙の起源を探った物理学者スティーブン・ホーキング博士の半生を描いた物語。日本でも科学本としては異例のベストセラーとなった「ホーキング、宇宙を語る」や、ALS患者として難病に向き合っている姿で知っている方も多いと思います。僕自身も、大学は物理学専攻に進んだのもホーキング博士の影響が多少あったこともあります(まぁ、彼の理論は未だに理解できてないですけど笑)。映画は、そんなホーキング博士がケンブリッジに進んでから、現在に至るまでの半生を描いています。

ちょうど同時期に同じ科学者をとりあげ、同じくアカデミー賞にもノミネートされた「イミテーションゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」と比べてしまうのですが、本作は邦題が「博士と彼女のセオリー」となっているように、ホーキング博士の人生の中でも、彼が生み出した理論ということではなく、彼がALSになりながらも、共に人生を歩んできた妻・ジェーンとの物語に中心があります。だから、「イミテーションゲーム」では科学者チューリングの取り組んだ偉業を映像として苦心して表現しようとしていたのに対し、本作ではホーキングの生み出した理論というのにほとんど触れられることがありません(研究発表の場とかで、一言二言語っているのみです)。彼の理論は、物理を学んでいる人にも分かりにくいものなので、下手な表現をするよりは、研究成果という部分はバシッと切ってしまって、病に立ち向かう一組の男と女の物語にしている。この部分に好き嫌いが分かれると思います。

僕自身としては、やはりホーキング博士が難病に立ち向かいながらも、科学者としての歩んできた道というのをもう少し観たかった感があります。その期待があったものだから、映画全体はすごく淡泊に見えて仕方がなかった。確かに恋物語としては、映像フィルターの使い方が技巧的で、各シーンごとの色調を細かく調整しているなど工夫点はたくさんあるのですが、人生を共に歩んできたという割に、物語としてはその表面しか描いてないように見えてしまいます。それにホーキング博士がALSで動けなくなることと、生きていくことに対峙する苦しみというのもよく見えなかった。車椅子を余儀なくなれたり、声も出すことができなくなったりと辛い困難は遭遇していくのだけど、すごくひょいひょいと上手く人生は進み、(本作の中で)彼が病という壁を乗り越えたことは分からないように思います。これも描き方の問題といえば問題なのですが。。

映画全体はよくまとまっているし、センスも抜群なので、観て損はないレベルはクリアしていると思います。ホーキングを演じたエディ・レッドメインは、本作でアカデミー賞最優秀主演男優賞に輝いたのは、今年のアカデミーの1つのサプライズでもありました。でも、確かに外見の難病患者はよく演じられていると思うけど、内から湧き上がってくるエモーショナルな部分は、他ノミネート者のほうが(いじわるのようですが)上のように感じます。外見だけの演じる困難さではなく、トータルでの演技というをもう少しアカデミーも評価してほしいかなと思ってしまいました。

次回レビュー予定は、「パリよ、永遠に」です。

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