12月 08

ポプラの秋

「ポプラの秋」を観ました。

評価:★★★

TVシリーズ「家政婦のミタ」などで活躍している名子役・本田望結が初主演、彼女とタッグを組むのはベテランの中のベテラン女優・中村玉緒という、おばあちゃんと孫がセットになったような作品。監督は「瀬戸内海賊物語」など、ここまでで4作を撮り上げている新鋭監督・大森研一。僕の生まれ故郷(といっても、岐阜市郊外の僕にとっては遠い、、飛騨高山)の山と緑の美しさが映える作品になっています。

大好きだった父を突然亡くした8歳の千秋は、失意の中をさまよう母親とともに、飛騨高山にポツンと存在するポプラ荘へと引っ越してくる。このポプラ荘を管理する中村玉緒演じるおばあさんは、死後の世界に手紙を届けるという不思議な能力があることを千秋に告げる。普段の生活もままならない母親を見ながら、父親に会いたい一心の千秋は毎日の出来事を手紙に綴り、毎日のようにおばあさんに手渡す日々が続く。その中で、千秋の毎日の生活はおばあさんとともに徐々に彩られていくのだった。。

作品の冒頭から、上記のようなあらすじながら、どこを撮っているのか、何か分からないような不思議な情景から、徐々に過去にフラッシュバックし、物語の輪郭が明らかになっていくという奇妙な演出を見せる作品になっています。きっと物語が普通のドラマならば、このヘンテコなオープニングに文句も言いたくなってくるのですが、物語のキーとなるのが、あの世に手紙を届けることができるというおばあさんのファンタジックな構成になることで、妙に納得感があるような不思議な味わいを醸しだすのです。よく、お盆やお彼岸の田舎は、どこか霊界と繋がっているような独特な雰囲気がありますが、その感覚と本作で感じる雰囲気というのが若干近いように思います。

本作では本田望結ちゃんが主演と謳っていますが、確かに主演だけども、それは言い過ぎという感があります。それ以上に異彩を放っているのは、中村玉緒でしょう。昔、テレビをよく見ていた頃は、もうバライティの人という印象でしたが、本作のおばあちゃん役というのが、円熟味がある、女優・中村玉緒の真骨頂を観た思いがします。失礼ながら、彼女が全盛期の作品を拝見したことがないのですが、やはりお母さん役、おばあちゃん役としての定番イメージの総決算が本作に発揮されていると思います。脇ではありますが、母親役として不思議な雰囲気を醸し出している大塚寧々も、作品に華を添えています。

次回レビュー予定は、「顔のないヒトラーたち」です。

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