12月 13

シャーリー&ヒンダ

「シャーリー&ヒンダ ウォール街を出禁になった2人」を観ました。

評価:★★

世界経済があえいでいる。日本国内の消費を見ても、経済成長は一巡し、誰しもが必要なものを手に入れている時代。政府でさえも、「1億人総活躍時代」とか、「少量多品種の需要要求に応える」などと打ち出している。これは裏を返せば、少子高齢化で人口が減少し、製品を作っても売れない、ならばサービス業を中心に個人によりフィットした需要に応えられる産業を振興し、年金財政は底をついているので、65歳以上でも死ぬまで元気に働かないと社会として成り立っていかないことを示しているのです。これは何も日本だけではなく、先進国はどこも人口減少に転じ、同じような道筋をたどることは然り。新興国でも中国経済が先細り感がでてきており、それによって先日のような急激な経済空転が起こるなど世界経済はもはや瀕死の状態といっていいのかもしれません。しかし、どこの政府も、金融機関も同じように今後の経済成長を謳っている。本当に、それでいいのか。本作は、そんな素朴な疑問を持ったアメリカ・シアトルに住むアラナイ(90代)の女性2人を追ったドキュメンタリーとなっています。

こと経済の専門家ではないので詳しいことは差し控えますが、30代の大人になった今、子どものときに感じた輝かしい未来というのに今もなっていないですし、今後死ぬまでにそういう世界になるようには思えません。それより、いつも憂慮しているのは、今の子どもに僕たち世代で何が残せるのだろうということです。確かに僕たちの子ども時代に比べ、ゲーム機も高性能になったし、電気で動く車が出てきたし、携帯網が発達して、世界中のどこでもインターネットでつながり、世界をまたにかけて仕事をしたり、どこでも映画を見れたり、本を読めたり、役所の届け出やスーパーの買い物なども自宅にいながらできるような時代になっています。でも、街中にロボット(人型などの分かり易いもの)は溢れていないし、飛行機にしろ、新幹線にしろ、乗りやすくはなったものの速さは驚くほど変わっていない。宇宙開発は何だか後退気味だし、病院にいってもすぐ治るような特効薬や治療法があるわけでもない。そんなの一喜一憂に進むわけではないのですが、残念なのは、小さい頃にはあった”夢の様な未来像を実現しそうな空気感”が、今の時代には感じられないことなのです。

しかし、経済成長は今後も続くという。こんな世の中に、どこに成長する空気にしろ、産業にしろあるのだというのでしょう。本作の主人公シャーリーとヒンダは、子どもたちや孫の世代、そして何よりも自分たちが残り短い余生の中で少しでも安心して生きたいと立ち上がります。そういう問題意識はお年寄りであっても大事だし、むしろそうした社会参画を、世の中は積極的に進めないといけない。だからといって彼女たちが訴えるようなサステイナブルな(持続的な)社会がいいかというと、そこはボクの意見とは相反しないところはあるのですが、彼女たちの問題意識は至極もっともだし、副題にあるように彼女たちの意見どころか、意見を言わせないような(出禁にしてしまう)金融界のドンたちも、何か自分たちの意見に不都合があるような裏の気配さえ感じてしまいます。

映画作品としてはすごく真っ当なストレートなつくり方をしてある分だけ、予告編で感じたようなドキドキ感がないのが残念なところ。それにしても、ニューヨークまで乗り込んでいく彼女たちの元気パワーには頭が下がります。日本でも、こういう元気なお年寄りが停滞している社会にカツを入れて欲しいなと思います。

次回レビュー予定は、「ファンタスティック・フォー」です。

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