3月 21

フライト

「フライト」を観ました。

評価:★★★
(★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高で、★が最低)

潜水艦映画にはハズレがないという鉄則があるが、基本的に乗り物系映画もハズレは少ないほうではないだろうか。特に、カースタントなど、乗り物を使った映画はそれなりに見せ場も多いので、観客を見込めるというのも古くからの鉄則としてあるのだ。この「フライト」も予告編を見ると、飛行機が背面飛行しているシーンがあり、それをちょっとだけ見てもスペクタクルさは感じられる。でも、映画の中身はだいぶ趣向が違うのだけれども。

きっと多くの人は、予告編から見ても一筋縄ではいかなそうな映画ということは予想できただろう。それでもせいぜい、何か第三者が絡むサスペンスものか、それとも犯罪者を裁くリーガルものかというところまでで、まさかアルコール中毒の男の話だとは思わないだろう(これはきっとネタバレではないはずw)。なんでこんな話を観ないといけないのかと思われる方もいるかもしれないが、最初からアルコール中毒者の話であることを理解していくと、この映画はなかなか見応えがある。ここで問われるのは、「多くの命を救えたならば、小さな間違いを犯してもいいのか?」という至極古典的な道徳的メッセージ。それを前半の迫力ある飛行機事故のシーンを絡めてくれるのだから、サービス精神いっぱいの映画だと僕は思う。

多くの人の解釈は分かれると思うが、結局「それはそれ、これはこれ」なのではないだろうか。確かに多くの人命を救えたことは素晴らしいし、尊敬もされることだろう。でも、飲酒の深みにハマって、人生を棒に振りそうになっていることとはまた別問題なのだ。だからこそ、正しい行いをしたことと、過ちを犯したことは全く別のこととして捉えなければいけない。しかし、こうした正義と罪が両方一変に起こったとき、人の道徳観は大きく揺さぶられる。本来なら切り分けられるような2つの問題の衝突を、あるたった1つの事件が結んでしまったことによる危険なモノの見方を、この映画は迫力満点に描いているのだ。

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