12月 31

さて、今年もやってきました、この季節。毎年恒例となっている劇場鑑賞映画のベスト10を発表したいと思います(ちなみに、昨年はこんな感じでした)。

毎度のことですが、基本的に★5〜4.5個くらいつけた作品の中から、個人的に今振り返ったときの順位でつけています。今年は総じて、153本の映画と映画館で出会うことが出来ました。「スター・ウォーズ フォースの覚醒」の感想文に書いたように、11月中盤から1ヶ月ほど入院していたこともあり、終盤では鑑賞映画を増やせなかった(スムーズにいけば170本ほどはいけたかも)のはありますが、その代わりに溜まっていた感想文を地道に書き上げることができました。5月、6月くらいに観た本数が多く、夏以降は最新作も含めて、ランダムに感想文をあげていましたが、来年はそういうことがないようにしたいなと思います。

それでは昨年は洋画から始めましたので、今年は邦画からスタートしましょう。

【邦画部門】

1位 幕が上がる

今年の邦画の上位は新しい形の映画スタイルを提案した作品が多いです。その中で、やはりピカイチなのは本作。奇抜な青春劇の中に、1つのアイドルグループと、1人の女優が成長している物語が織り込まれている三重構造のような作品になっています。単なるアイドル映画の枠に収まらない必見作です。

2位 味園ユニバース

本作の魅力は何と言っても歌。ラストのステージだけではなく、その場面場面で主人公が歌う歌が凄く力強い。歌謡曲が持つ詞の凄さ、大阪・下町の汚ったらしいまでの魅力も含め、しょーもないくらい素敵な作品です。

3位 百円の恋

映画誌では2014年公開作かもしれないですが、観たのが今年の1月なのでランクイン。和製女性ロッキーですよね。ダメダメ女が魅せる闘魂、強くなっていくと同時に女性としても磨きがかかる主人公に誰しも引き込まれます。

4位 バクマン。

映画を観ていて、すごく漫画愛を感じる作品になっています。これを観たら、誰しも漫画が読みたくなる。漫画のような映画、映画のような漫画、、こうした新しい感覚をリアルに感じられる快心作です。

5位 バケモノの子

今年のベスト10で唯一選出のアニメ映画。年々力がついてきている細田守監督の広がっていく世界観に感服。やや盛り込み過ぎな感がなくはないですが、渋谷・青山町あたりと東京にいた頃によく行っていたところが終盤の舞台になっているのも、個人的に高評価。

6位 俺物語!!

とっても分かりやすいストーリーに、分かりやすいキャラクター配置なのですが、だからこそストレートに心に響く物語になっています。それぞれのキャラクターをしっかり演じている各俳優陣も拍手モノな作品です。

7位 鏡の中の笑顔たち

今年観た中で拾い物だった一作。仕事をすることとは、生きるということとは何なのかをじっくりと教えてもらえる作品。何をするにしても、そこに心がこもるかどうかで毎日の生活が大きく変わってくるということを、北海道の素晴らしい風景とともに綴られていく素敵な作品です。

8位 きみはいい子

生きていくということは辛い。特に、大人になれば誰かに認められるということがなくなっていく。でも、大人になっても、子どもでも、身近な人を優しく認めてあげること。そうすれば、世界はゆっくりと変わっていくのかもしれないと思える希望に満ちた作品。

9位 恋人たち

人が毎日小さく積み上げてきた幸せ、それを一瞬で奪われたときに感じる大きな喪失、そして、怒り・泣き・呆然とした中で再生していく過程を描いた人間劇。そこで救われるのは、結局人でしかないという当たり前のことに気付かされる作品。

10位 さよなら歌舞伎町

1つのラブホテルを巡って入り乱れる様々な人物の群像劇。歌舞伎町が醸し出す雑多な空気感が、うまく人間ドラマとマッチしていて絶妙なブレンドを魅せてくる作品になっています。

邦画ベスト10は上位は新しい映画スタイルを提案してくれる作品、下位はじっくりとした見応えある人間ドラマを見せてくれる作品が並ぶというラインナップになりました。続いて、洋画部門へ。

【洋画部門】

1位 幸せのありか

単純な障害者ものではありません。主人公マテウシュとともに生きた家族、周りの人の軌跡を描いた作品。シークエンスの合間や、エンドクレジットまで計算された演出も見事。映画全体に不思議なマジックがかかっている、とても魅力的なポーランド映画です。

2位 サヨナラの代わりに

これも単純な難病ものではありません。むしろ、感動作を期待すると大きなしっぺ返しを食らう作品です。この映画で待っているのは、身も切れるような残酷な悲しさだけ。しかし、その悲しみの先にこそ、人が生きる本当の理由が見えてくるのです。問題作でもあり、いろいろ考えさせる傑作。

3位 イミテーション・ゲーム

現在のパソコンやスマートフォンの原理を生み出した1人の天才数学者。悲しいながら、彼が最も輝いていた物語は、戦争という名の下に封印されてしまった歴史になってしまった。天才数学者でも解けなかった人生の哀しい末路。それを見事に対比させた秀作です。

4位 カプチーノはお熱いうちに

13年の年月を挟んで描かれる1人の女性を巡る人間劇。この作品の素晴らしいのは、13年という期間をあえて描かず、点として結ぶことで過ぎた月日のドラマをいろいろ想像させるところです。人を愛でるイタリア映画の素晴らしい味わいも出ている作品。

5位 ぼくらの家路

主人公2人の兄弟の演技がとにかく見事な作品。特に、お兄ちゃん役の子の目線が力強く、それでいて繊細にいろんな表情を見せるのがなかなかです。これだけ素晴らしい子役を排出できるのはドイツ映画の力強さです。たった3日間の旅ですが、ラストには2人の人生が変わる旅であったことが分かる名シーンになっています。

6位 チャッピー

「スター・ウォーズ」の公開もあった今年ですが、SF作品でのランクインはやっぱりこの作品。ブロムカイトの素晴らしい発想力は、「ロボコップ」の何倍も先を行く素晴らしい物語。驚愕のラストシーンは誰しも想像することができなかったことでしょう。見逃した方は是非。

7位 妻への家路

時代の流れに翻弄され、苦労して戻ってきた男の妻は夫の顔を覚えていなかった。記憶障害という病を抱えながら、今でも必死に夫の帰りを待つ妻。実際は彼女のそばに帰ってきているのに、振り返ってもらえない夫。行き違う愛の中でも、その想いに寄り添えることができるかどうか。。哀しくも、素敵な愛のドラマ。

8位 マッドマックス 怒りのデス・ロード

見る人が見たら、なぜ、この作品が1位じゃないだと怒られそうです(笑)。過去にも3作品作られていますが、それを全く観なくてもいいです。とにかく余分なドラマが全く無く、全編通して、アクション・アクションの連続。息つく暇もなく、最後まで面白さ全開でいける快作です。

9位 マイ・インターン

アン・ハサウェイの魅力満点なヒューマンコメディ。「プラダを着た悪魔」から、本当に彼女が女優として数段成長していることを感じられる作品になっています。お仕事ムービーとしてもピカイチ! 70代だからといって、老けこんではいけない。人生はいつでも磨きがかかる瞬間があるのです。

10位 パレードへようこそ

炭鉱夫とゲイという水と油のような集団が出会ったときに起こった奇跡。グローバル社会で、価値観が多様化してくる時代。国や人種、宗教、能力、性向が違う人たちで社会を形成していく必要に迫られる現代だからこそ、対話と信頼が必要という本作の意味は素直に心に響いてきます。

今年の洋画ベスト10には、ポーランド、ドイツ、イタリア、南アフリカ、中国と多様な国の作品のラインナップとなりました。昨年の「インターステラー」のような大作感のある作品が入ってこなかったのが、少し残念ではありますけどね。

さて以上で、今年の劇場鑑賞映画ベスト10を終わります。2015年は皆さんにとって、どんな1年、そして、どんな映画に出会えた1年だったでしょうか。来年も、年間150本鑑賞を目標に1年頑張っていきたいと思います。と同時に、来年は本ブログから映画関連記事も引っ越しを考えています。準備が整い次第、またこちらで報告させていただきますので、今しばらくお待ち下さい。

2016年も皆さんにとって、よい一年でありますように。

12月 30

恋人たち

「恋人たち」を観ました。

評価:★★★★

「ぐるりのこと。」の橋口亮輔監督が描くのは心に傷を抱えた3人の男女の物語。本作の捉え方というのは、人によって様々でしょうが、僕は”喪失”を扱った作品ではないかと感じます。主として描かれる架橋の保守点検工・篠塚は最愛の恋人を通り魔に殺されている。ややサブ的な立場で描かれる主婦・瞳子は自分のことに関心を持ってくれない夫と姑の間に自分を見失い、ゲイの弁護士・四ノ宮は学生時代から想い続けているノンケの友人に悶々とした毎日を送っている。皆がそれぞれに大事なものをもっていて、それをいろんな瞬間に壊され、茫然自失の状態(”喪失した状態”)から這い上がろうともがき苦しむ様を冷徹に、それと合わせた温かみとともに描いていく作品となっています。

人は誰しも、いつか死ぬ。その当たり前の事実の中で、漫然と過ぎる毎日をやり過ごさねばならない。ある有名人が「人生とは、大いなる暇つぶしだ」といいましたが、僕はこれはある意味すごく的を得た名言だと思います。もちろん、毎日皆何か仕事をし、何かを学び、何かを慈しみながら生きている。もっと現実的には衣食住を満足し、更に、その上にいろんな欲を満たすために生きている。でも、最終的に死ぬ瞬間には、お金でも、名誉でも、愛情でも、何も持っていくことはできない。そんな毎日を人はなぜ生きるのだろうか? 哲学的な議論にはしないまでも、そんな現実の中で、人は生きることに意味をそれぞれが見出しながら、同じゴールに向かって走っているのです。じゃあ、その中でその生きる意味を失ったらどうだろうか? 毎日コツコツと小さくまでも見出してきた幸せ、あるいは運命的に手に入れた幸せ、それをある瞬間に問答無用に奪われたらどうなってしまうだろう。本作は、残酷なまでにその奪われる瞬間を描き、そこから再生していく様を描き切った作品となっているのです。

「幸せが音と立てて崩れる」という慣用句がありますが、それぞれのキャラクターが迎える、その瞬間の演技がすごく味わい深いものになっています。篠塚の亡き恋人を想う長いモノローグ、瞳子が漫然な毎日から救い出してくれる男の現実を知った嗚咽、四ノ宮が切れた携帯電話越しにも話しかけ続ける吐露した想い、、それぞれは辛い現実ではありますが、とことん落ちた後には生きていくしかないという事実しか残らないのです。そうしたボロボロになったときに救ってくれるのは、職場の同僚や家族がかけてくれる何気ない一言。それは決して積み上げてきた幸せを全回復してくれるパワーを持ったものではないけれど、そうした些細な幸せが周りにある限り、人生とは捨てたものではないのかもしれません。

ラストの持っていき方は少しありふれたものになっているのが物足りないですが、こういう形以外にハッピーエンドになる方法はないのかもしれません。主人公3人よりも、彼らの周りにいた優しく声をかける人たちのように、僕もなっていきたいと思う作品でした。

さて、本作をもって、2015年に鑑賞した映画に関しては全ての感想文を書き終わりました。次回は恒例の、2015年鑑賞映画ベスト10です。

12月 30

杉原千畝

「杉原千畝 スギハラチウネ」を観ました。

評価:★★☆

名前だけ知っているけど、その人の業績を知らない偉人というのは結構いるものですが、僕にとって、”杉原千畝”という人はその一人です。ひょっとしたら名前すら知らない人もいるかもしれないですが、彼が生まれ育ったのが現在の岐阜県の八百津町出身ということで、僕と同じ岐阜県出身でもあり、小学校の頃の確か社会科の時間に県内の偉人の一人として学んだ記憶がおぼろげながらにあります。でも、彼の功績といえば、第二次世界大戦下のヨーロッパにて、外交官としてユダヤ人たちに後に”命のビザ”と呼ばれるビザ発給を続けたということだけ。彼がどうしてそういうことに至ったのか、その次代の背景はどうだったのか、また、杉原千畝がどういう人物だったのか、、この映画は彼の半生を追うことでそれを知らしめてくれる作品になっています。

興味深いのはやっぱり冒頭の部分。日本の支配となった中国・支那地方(後の満州)にて、彼が外交官ではなく、スパイとして暗躍していたということ。なにも、「007」に登場するMI6のような秘密機関はなくとも、裏で動く外交活動であればスパイ活動と同じことを描いているだけなのですが、軍部と外務省との狭間で、後にいろいろときな臭い事件が起こる満州を冒頭に描くことで、何か物語の面白さを感じずには得られませんでした。、、といいつつ、これは杉原千畝という人物を描く伝記映画だったということを思い出し、この後にどのように話を振っていくかと思いましたが、スパイとして描いたのはほんの一瞬だけで、すぐに表向きの外交官の姿として日本に左遷さられることから映画は伝記モノの色合いを強くしています。しかし、杉原がその名を上げるようになったリトアニア以降のお話になっても、ところどころに彼らの周りに隠密活動をしていくキャラクターが登場してくるので、これは彼をスパイとして扱いたいのか、それでも偉人劇としての人間ドラマを中心に扱いたいのか、作品の焦点が少しぼやけてくるのです。もちろん、世界情勢が一刻一刻と変わっていく、1930年〜40年代の外交活動というのは裏で動く部分が多かったのは分かりますが、その分だけ、彼が行ったユダヤ人に対する行為とそれに対する想いというのがかなり薄いものになっていると感じざるを得ませんでした。

それに物語が少し整理されていないのも気になります。特に、冒頭から登場する意味深なイリーナという人物は、杉原の恋人のような存在を匂わしながらも、今はなきロシアの亡霊を追いながらレジスタンス活動をしているみたいなのですが、それにしてもお話の中で一瞬登場しているだけでどういう背景を持っているのか分かりづらいし、運転手になるペシュや秘書のグッジェにしろ、熱いキャラクターではあるんですが、それぞれがどういう行動をしていて、どういう想いを抱いているかは分かりにくい。また、それ以上に気になるのが、演出がイチイチ古臭いことでしょうか。良く言えば、熱い思いを分かりやすく伝えていて、ビザ発給を決断する場面や、グッジェが杉原に張り付いて最後まで支えるなどジーンと来る場面もあるのですが、ところどころ昭和映画の演出かと思うくらい臭いセリフを吐いてしまっていることもあり、見ていて少し赤面してしまうような場面もなくはなかったです。

ただ、杉原はどういう形で動いていて、リトアニアなどの東欧に住むユダヤ人たちがどういう立場に追い込まれていったかが分かりやすく描かれていました。今までユダヤ人迫害というと、ナチス・ドイツというイメージが一番に来るのですが、独ソ不可侵条約の下、あまり描かれることのないソ連でのユダヤ人迫害のほうも非常に酷いものだったことが理解できます。今はシリアからの難民がヨーロッパでは大きなニュースになっていますが、ちょうどそれと同じように第二次世界大戦下ではドイツを中心に迫害されたユダヤ人たちが難民となって行き場を失っていたということなんですね。それによって、杉原のした功績が如何に意義のあるものだったか、それがより鮮明になった鑑賞でした。

次回レビュー予定は、「恋人たち」です。

12月 29

スター・ウォーズ フォースの覚醒

「スター・ウォーズ フォースの覚醒」を観ました。

評価:★★★★

IMAX3Dの字幕版にて。

このブログでは取り上げていませんでしたが、実は11月中盤から1ヶ月あまり入院してました。入院していた理由は大したことないのですが、一映画ファンとして、「スター・ウォーズ」の公開までには退院したいなと思っていました。退院後であまり動けない体調ではあるのですが、この公開だけは這いつくばってでも行きました。それくらい、僕にとっての「スター・ウォーズ」は意味ある作品なのです。僕が生まれた年に「スター・ウォーズ エピソード4(以下、EP4) 新たなる希望」が公開になり(と正確には1978年で同じ年代、、、と、これはあんまり関係ないのですが笑)、ちょうど貧しい我が家にもVHSビデオデッキが設置されたのが小学校1年生くらい。幼稚園の頃からウルトラマンと大河ドラマ(歴史劇)が好きだった僕にとって、初めてレンタルビデオでハマった洋画が、「スター・ウォーズ」でした。最初は日本語吹替え版から始まり、次に字幕版へ。EP4〜EP6まで、親が呆れ返るほど毎回同じビデオを借りてた覚えがあります。そして、映画ファンになったのも、ジョージ・ルーカスがEP1公開前に、1997年頃からたて続きに公開したデジタルフッテージを追加した”特別版”の公開。ファンの間では不評も多い”特別版”でしたが、当時新宿ミラノ座の大スクリーンで観た迫力は、映画こそ映画館で観なければ始まらないという興奮を覚えたもの。そして、1999年にEP1が公開になり、金沢の映画館にて、新しい歴史(作品的には、EP4よりも前になっちゃいますが笑)を目に焼き付けました。何しろ、その場面場面で観て感じただけではなく、観たときの記憶とともに、人生とともにある1つの作品といっても過言ではありません。

そんな期待を持っての今回の鑑賞。公開初日にはさすがに行けませんでしたが、是非ともIMAXで見たいという思いで劇場に足を運びました。映画ファンならぬとも、スター・ウォーズファンには嬉しい出来の作品に仕上がっていると思います。観てまず感じるのは、EP4〜EP6までのアナログ感は失わないまま、シリーズの地続きとして相応しい演出をしていることでしょう。ファンの中には、先ほども触れたデジタルフッテージを加えた”特別版”や、VFX好きのルーカスが凝りに凝って当時デジタル技術をふんだんに加えたEP1〜EP3のつくり方にガッカリした方も正直いたことでしょう。最初のEP4が公開になったのが1978年で、EP1が1999年、21年も立てば、VFXのやり方も進化して当然なのですが、前の時代を描くEP1〜EP3がどうしても進んだ未来技術の世界に見えてしまっていたからです。でも、時代はそこから更に進化しているのです。昔のアナログ感を失わないような味付けで、VFXを構成できるようになっているのです。これもEP1公開から、15年で技術が数段高いレベルに来ていることの現れなのです。

それに監督が「スター・トレック」の新シリーズをも手がけたJ.J.エイブラハムが手がけていることも成功の要因でしょう。数ある伝説(レジェント)を壊さないで、新しいSFの方向性を示した「スター・トレック」は本当に僕も脱帽したのですが、彼の腕は本作でも巧みに生きています。それにハン・ソロ、レイア姫、そしてルーク・スカイウォーカーというキャラクターが、EP4〜EP6と同じキャストのまま出ているのが凄い。もう最初の公開から36年ですよ。C-3POやR2-D2まで、同じキャストのまま出続けることができていることこそ、このシリーズが神格化されるのも頷けるような気がします。ストーリーとしては、今まで帝国軍の一兵卒としてお馴染みだったストーム・トルーパーに焦点があたり、帝国軍の中でも、旧作でのダースベイダーだけではない、いろいろなキャラクターが登場してくるようで、これからが楽しみのひと言です。

、、といいながら、満点評価していないのは、どうしても「スター・トレック」を観たときのような、ズバ抜けた何かというのがないからでしょうか。。これも「スター・ウォーズ」の生みの親でもある、ジョージ・ルーカスの大きなパワーみたいのに、エイブラハム監督自体が持ち前の自由な発想力が突き抜けて行かなかったことによるかと思います。ハン・ソロがああいう形で離脱していくのを驚かれた方もいるかもしれないですが、これもコアなファンなら、そもそもソロ自体が早々にいなくなる予定のキャラクターだったのを折り込み済みなので、70代のハリソン・フォードを卒業させるためにも理解できるところでしたしね。今回はルーカス・フィルムのロゴがありましたが、本作から製作がディズニーに映っていることもあり、今までは途切れ途切れだった映画にしろ、TVシリーズにしろ、ディズニーとしてのキャラクター展開にしろ、今後は爆発的に増えていきます(ちょうど、今のマーヴェル・コミックシリーズのように)。今後はルーカスから、エイブラハムに製作総指揮も移り、新しい伝説をもデザインしていくことになるそうですから、今後シリーズに素直に期待を持てる作品でした。

ファルコン号の勇姿や、それぞれのキャラクターを是非スクリーンで目に焼き付けてください。個人的には、エイブラハムが抜けた新生「スター・トレック」シリーズのほうが気がかりですけど。。(笑)

次回レビュー予定は、「杉原千畝」です。

12月 28

母と暮せば

「母と暮せば」を観ました。

評価:★★

井上ひさし原作の戯曲を、「小さいおうち」の山田洋次監督が映画化した作品。もっと正確にいうと、井上ひさしの原作戯曲で生前作られた作品は「父と暮せば」であり、同様の構成で「母と暮せば」を構想していたが、その段階で他界されてしまったこともあり、山田洋次監督がその構想を補う形で映画化した作品が本作ともいえます。「父と暮せば」については2004年に戦争映画監督としても知られる黒木和雄監督、宮沢りえ、原田芳雄主演で映画化されており、ちょうど僕自身も当時大阪の映画館で原田芳雄さんの舞台挨拶付で観た、思い出の作品でもあります。「父と暮せば」は作品的にも戦争から明日への希望を描いた作品でもあり、個人的に好きな作品でもあったので、その地続きとなる本作がどのような形になっているか期待をしての鑑賞でした。

本作は「父と暮せば」を単純に母親版に翻訳した作品かと思いましたが、同じ幽霊と同居という形は変わらないものの、いくつかの設定が違っています。まず物語の舞台が、「父と暮せば」が広島だったのに対し、本作の舞台はもう1つの爆心地である長崎となっていることが違います(この辺りは、井上ひさしの構想としても、広島・長崎・沖縄と舞台を移した作品にしたかったとのことで、原案者の意向通りになっているかと)。そして一番大きな違いが、「父と暮せば」は題名通り、父親が幽霊で、原爆から生き残った娘と同居していく話なのに対し、本作は題名とは違い、息子が幽霊で、原爆から生き残った母親と同居していく話となっているところでしょう。これが「父と暮せば」が死んだ父親の呪縛から逃れられない(というより、逃れることを申し訳なく思っている)娘が、未来に向かって生きるという前向きな話になっているのに対し、本作は未来を生きるべく学んでいた医学生の息子・浩二が死んだことで、今を生きている母親と同居という形になってしまっているので、お話としてどうしても後ろ向きな形を取らざるを得なくなってしまっているのです。かえずもがな、その未来に向かってというメッセージ性を、浩二の恋人・町子に背負わせるのですが、そのことで町子のエピソードを余分に描く必要が出てしまい、母親と息子という2人の劇の尺が短くなってしまうジレンマが生じてしまうのです。

物語として未来を背負うべき町子が、その役回り通り進み、それを浩二の母親が見守っていくという形をとることでお話としては一応決着はするのですが、非常に回りくどいし、せっかくの大女優・吉永小百合が演じているのにも関わらず、ラストの母親の存在がどうしても弱々しいものにみえて仕方ありません。ラストシーンは、こういう設定上ああいう終わり方にするしか選択肢はないように思えますが、「父と暮せば」のラストに比べると、非常に後味の悪いものに感じてなりません。井上ひさしがどこまで構想設定をしていたかは分かりませんが、作品としてはもう少しシンプルに町子だけではなく、戦後生き残った全ての人に向けたメッセージとしてもよかった。個人的には、「父と暮せば」と同じ形の母親版でもよかったと思いますが、例えば、母親が助産師であるというところをもっと活用して、戦後生まれてくる子どもたちを使うような形もあったかと思います。

ただ、冒頭の原爆シーンはここ数年観た作品の中でもピカイチに恐ろしかった。原爆が落ちた後を生々しく描くのではなく、そこを想像させて、落ちる瞬間までをリアルに作りこむという手法が効果的に使われていると感じました。出だしは良いだけに、何か物語をもう一工夫して、より分かりやすい形に変えたほうがいい作品になったと思います。

次回レビュー予定は、「スター・ウォーズ フォースの覚醒」です。

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