2月 17

野村克也という人物は、僕は監督でしか知らない。まずは東京ヤクルトの監督で優勝し、万年Bクラスで低迷していた阪神の上昇基盤を作り、そして楽天を勝てるチームに育て上げた知将。僕の知っている野村監督というのは、この3チームを渡り歩いた監督という姿。そして、なんといってもヤクルト時代に築き上げたID野球という分析野球の人というイメージがありました。

僕が本格的にプロ野球を応援しだしたのは2009年シーズンからなので、当然、楽天におられたときの試合も観戦したことがあります。腹の出たおっちゃんという見た目な感じはそうでしたが、この本を読んでいると野村監督がどういう野球像を、そして監督像を描いておられたが、よく分かります。ヤクルトでも、阪神でも、楽天でも、ノムさんが入られる前は失礼ながらもBクラスをフワフワしている弱小球団だった。阪神時代は在籍中に結果は残せなかったけど、ヤクルトではリーグ優勝と日本シリーズ制覇、楽天でも万年下位だったチームをクライマックスまで連れて行った。メディアの取り扱われ方はいろいろあるかもしれませんが、単純に実績だけを見ても、なかなかの凄腕だということが分かります。

分析野球というと、よく野球中継や野球ゲームにも出てくる、ストライクゾーンを9つに分割するという配球を映し出すのを「野村スコープ」というらしい。野球を”とりあえず何が何でも打て、そして投げろ”という精神論ではなく、それぞれの選手のクセを分析し、そしてそれに対応するようにプレーをするというID野球というスタイルは日本の野球界に大きなインパクトであったと思います。

それにしても、この本には凄くいい言葉も書かれている。参考までに。

野球は「間」のスポーツだからだ。ピッチャーが一球投げるごとに時間があく。そして、これが何を意味するかといえば、「このあいだに考えろ、備えろ」ということにほかならない。一球ごとに変化する状況の中で、どういう選択をするのがいちばんベストなのか。即座にそれを考え、準備する時間が与えられているのである。(p.160)

サッカーのように動き続けるスポーツでない野球。こういう静止した時間のあるスポーツは、一般的に考える、考えてしまうところに強さ弱さが出るといいます。ここが野球の魅力でもあるんです。

人間は、生涯学習である。その意欲をなくしたらおしまいだ。進歩も成長もない。「組織はリーダーの力量以上に伸びない」と私はたびたびいっているが、だとしたら、リーダーすなわち監督自身が力量を伸ばし、器を大きくしなければ、チームもそれ以上成長しない。(p.120)

これは野球だけでなく、教育観や組織論にもつながってくる言葉。人間は日々成長する生き物。成長が止まったときが、”人”としての後退の時期なのかと思います。どんなに小さなことでも、どんなに小さな一歩でも、謙虚に学ぶ姿勢がいつも必要。そういうことを理解できる集団こそ、強いものはないということでしょう。

折しも、WBCの合宿が始まりました。この本では2009年の前回大会直前に書かれており、当時も少しすったもんだで最終的に原監督に決まったことにノムさんのボヤキがあります(笑)。そのボヤキを跳ね返して、前回は連覇を達成した侍ジャパン。今回は果たしてどうなるのでしょうか。。

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