5月 16

リンカーン

「リンカーン」を観ました。

評価:★★
(★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高で、★が最低)

2009年がリンカーン生誕200年だったことや、大統領選もあったことも踏まえ、リンカーンにまつわる映画がここ2、3年多かったように思います。この最終章ともいえるのが、このスピルバーグ監督の「リンカーン」。長引く南北戦争下、戦争の終結と奴隷解放宣言に基づいた関連法を下院議会で可決されるまでを描いた作品となっています。

スピルバーグというと、幼い頃に両親が離婚していることもあり、とくに”失われた父性”というのが作品の中心にあると盛んに言われています。このリンカーンは逆に父性が前面に出た作品ともいえ、特に息子たちを守り、引いては戦争で失われていく多くの若い命をどう救うかに重きを置いて描かれていきます。冒頭の兵士への語りかけ、中盤で息子を戦地に行かすまいと苦心する様は特に重点化して描かれていることに象徴されています。

でも、そうしたスピルバーグらしさを感じるのは少しだけで、大半は奴隷制度を撤廃するために苦心する政治家リンカーンを描いた作品ともいえるでしょう。メインは、議会でどう多数派工作を図るか奔走する人々を取り上げた政治劇でもあるのです。アメリカ人ならバックグラウンドにある共和党、民主党の考え方や、南北の対立、それぞれの政治家たちが置かれている立場が理解できるのかもしれないけど、日本人から見ると、そうした政治家たちの姿に共感できるところがあまりに少ない。単なるロビー活動劇にみえて仕方ないのです。

とかく政治は時代の流れや空気に大きく左右されることはよく分かりました。ダニエル・デイ=ルイスのアカデミー賞主演男優賞受賞をはじめ、各賞を受賞・ノミネートされているだけの役者の力量は分かりますが、作品自体に心揺さぶられることがなかったのが何とも惜しいところです。

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