10月 29

危険なプロット

「危険なプロット」を観ました。

評価:★★★★★

先日、「パッション」で久々のデ・パルマ作品で映画の面白さというものを発見しましたが、オゾンの新作となる本作も凄い。作文に才能を見出したある青年の物語に、教師であるはずの男がどんどんのめり込み、その世界でハマっていくという難しい作品を見事に映像化しています。オゾンは「まぼろし」でも、未亡人が感じる愛情とエロスの喪失を、画面の至るところから未亡人に迫る手という形で表現していましたが、こういう文章では表現できても、実際にその感情を視覚化してみせるということに絶大な力を発揮する監督さんだと思います。本作は、オゾンの過去の作品群からみると少しおとなしめな話ではあるのですが、オゾンの力量は遺憾なく発揮されています。

物語の中で、青年が書く小説は、ある友人との交流という実体験をもとにして描いているもの。当然、実体験と小説に表現されるところは差異があるはずだし、物語は現実を飛び越えてフィクションになることもある。でも、どこまでが真実で、どこからそうではないのかという境界は本人でしか分からない。その境界を逆にぼやかすことで、読者である教師はどこまでが真実なのか、どこからはフィクションなのか分からないところに面白みを感じてしまう。真実だと面白くない、逆にフィクションだと突拍子もなさすぎる、、教師の指摘で直される物語<プロット>は面白く、かつ現実だったら危険な香りがするものに変化していくのだった。。

物語構造としては、現実と小説世界との行き来という二面だけだけど、その境界がぼやけてきて、現実世界にしかいないはずの人物が、想像上の小説世界にどんどんはみ出してくる。現実ではありえないような話も事件として起こってしまう昨今、この嘘(フィクション)と本当の境界は非常に曖昧なことを巧みに表現している。そうしたそれぞれの物語が入れ子のように進むのが、現実という世界。巧みに表現されたラストシーンなどは見事という言葉以上のものはない。

preload preload preload