7月 17

WOODJOB

「WOODJOB! 神去なあなあ日常」を観ました。

評価:★★★★

「ウォーターボーイズ」、「スイングガールズ」など、独特の世界観を持つ矢口監督の新作は、三重県の山奥の林業体験物語。矢口ワールドというと、近作の「ロボジー」までそうだけど、日常のありそうなお話を、ハチャメチャな登場人物で押し切ってしまうという、どちらかというとキャラクター勝負の映画が多かったんですが、本作は全体的にそんなぶっ飛び感が少ない抑えた作品になっています。確かに、「舟を編む」などで繊細なキャラクターを登場させることが多い、三浦しをんの原作ものということもあるのでしょうが、この矢口色を抑えたことが、この映画ではいい方向に働いているように思います。林業という、どちらかといえば就業人口が減っている斜陽産業の中でも、ひたすら懸命に生きる人たちを、矢口監督の持ち味でもある明るさのエッセンスが加わって、とても前向きな作品になっていることがすごく好印象なのです。

私的なことになりますが、実はこの映画、東京に住んでいたときに最後に観た作品となりました。この映画の舞台は三重県津市の美杉町。僕は美杉ではないですが、その隣の隣くらいの町に、東京から先々月(2014年5月)に引っ越しました。狙っていたわけではないですが、この映画に出会ったことに少し運命を感じてしまいました。美杉のほうにもドライブがてら行ってきて、ちょうど撮影場所になったところも通過しましたが、確かに山奥(笑。でも、そこでも確かに生きている人たちがいて、この映画のように地元を愛している多くの人がいる。三重だけではなく、きっと日本の多くの田舎と呼ばれる地域では、同じ表情の人が多く暮らしているんだなと感じてしまいました。

決して、都会を否定するわけではないですが、成長社会の中、大都市を中心に栄えてきた日本社会というのは一つの転換点を迎えているのではないかと思います。高齢化とともに、より便のいい都会への移住というのが昨今は続いていますが、若者を中心に今一度地方から、地方の良さをアピールしないと、逆に日本が世界からも置いていかれるのではないかと思っています。世界の多様なニーズに応えられるような、面白い産業を地方から発信できるように。映画の本筋とは少しずれますが、ラストシーンのように地方に答えを見つけてくれる若者に大いに期待したいなと思いました。

次回、レビュー予定は「マレフィセント」です。

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