7月 31

青天の霹靂

「青天の霹靂」を観ました。

評価:★★

お笑い芸人であり、映画でも「陰日向に咲く」の原作者(小説家)として、マルチな活動を続けている劇団ひとりの監督デビュー作品。芸人の映画作品なんて、、と思うかもしれないですが、僕の尊敬するウディ・アレンももとはスタンダップのコメディアンだった。日本では俳優をやりながら監督というのは一般的になってきているし、音楽界やCM業界から転身してきた例も多くはなってきているけど、なかなか芸能一般から裏の映像作りに携わるほうに回ってくる人は少ないように思います。最近では吉本興業が主催する沖縄国際映画祭で、多数の芸人たちが監督として作品づくりをしていますが、メジャーデビューを重ねる人は何人いるかという状況。北野武監督という別格はいるものの、ウディ・アレンのように、自分の芸風のアウトプットの1つは映画という巧みな映像作家が登場してくるのを期待したいところです。

その意味では、劇団ひとり監督が手掛ける本作は注目していた作品だったんですが、デビュー作としては可もなく不可もなくという無難な作りになっていると思います。確かに、生きることを半ばあきらめかけていたある男が、その男を生んだ両親に過去の世界で再開するという物語はワクワクさせてくてる展開を予感させます。でも、この展開自体も形をかえて古くからよくある設定なので、そのありがちな設定を凌駕するようなポイント(これこそ、劇団ひとり監督の持ち味というところ)を感じさせて欲しかった。母親の死は予告編でも、物語の冒頭でも何となく予感はできるので、その死に対峙した父親と男との心の葛藤みたいなものを描くだけでも見せ場はあったんじゃないか? 確かに、マジシャンコンビとして生きる術を過去の世界で知った男と、息子が生まれることで、コンビで見た夢に変化が表れるところは1つ見どころではあるんですが、見せ場にまで昇華しきれていない。ラストシーンもとってつけたようで、これこそギャグなのかと思ってしまいました。

とはいうものの、酷評するまで悪くはない映画なのは、キャスト・スタッフとも、本作を誠実なまでに作りこんでいるから。役者の一挙手一投足もそうだけど、例えば、タイムスリップした40年前の浅草の情景を空気管まで見事に再現したセット作りの繊細さなどは半端なものではないです。ここまで丁寧な作品作りをしてくれているので、ひとり監督(及び、ひとり組)の次回作が今から少し楽しみになってきました。

次回レビュー予定は、「プレーンズ2 ファイヤー&レスキュー」です。

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