9月 18

her

「her 世界でひとつの彼女」を観ました。

評価:★★★★

「マルコビッチの穴」や「アダプテーション」など現代社会をどこか風刺しながらも、独自のストーリーテリングを魅せるスパイク・ジョーンズ監督作品。今回、彼がとりあげたのは近未来的な世界で起こる、人工知能OSとの恋。ロボットやクローンのような実体化しているモノではなく、人工知能というつかみどころのない仮想化された存在との恋を描いています。だからかもしれませんが、確かに恋物語なんだけど、出てくるのはホアキン・フェニックス演じる主人公のセオドアのみという状況がすごく不思議。彼が恋い焦がれる存在は、セオドアに合ったような会話をしてくれるだけではなく、彼を気遣うこともできるという最新なOSなんだけど、そんな空虚な存在に恋心をどう抱くのかが、本作の見どころの1つになっています。

どこか不思議に感じてしまうのは、ラブロマンスでありながらも、そこに何らかの形で介在するエロスがないからでしょう。もちろん、従来の映画でも一部のラブコメを除いて、そこまでエロスを前面に出した作品というのは少ないと思いますが、視覚・聴覚(触覚や嗅覚などは映画では感じれないので、、)から入ってくる情報の根底には、恋心というものの底辺に流れるものは何かしらあったはずです。それが、この映画ではかじろうてOS”サマンサ”の声としての入力はあるもの、実態がとことんないものにどうして愛が生まれてしまうのかが違和感が生じる。ここに現代人の去勢された恋の姿があるのか、、これからの恋とは、今までの恋愛小説の文字通り(テキスト)な思いやり1つで成立してしまうか、、、単純なようで、恋や愛の深い哲学的な問いも含んでいる作品だと思います。

出てくる最新機器(もちろん、”サマンサ”も含め)の、プロダクトデザインの秀逸さには目を見張ります。まぁ、どこかApple風なテイストを強く感じるのは、それだけAppleが生み出した文化というのがすごいことの表れかもしれません。中盤少しダレてしまうのが少々残念ですが、全体的にオシャレな作品ですので、デートにもピッタリな作品です。

次回レビュー予定は、「宇宙兄弟#0」です。

preload preload preload