12月 31

ニューヨークの巴里夫

「ニューヨークの巴里夫(パリジャン)」を観ました。2014年、最後の観賞映画です。

評価:★★★★★

2014年の最後の観賞映画が、いい作品で締めれてよかったです。今年最後の作品ということもあって、少し評価が甘いかもしれませんが、十分満点評価に値する作品だと思います。ただし、この作品はセドリック・クラピッシュ監督の本シリーズ、「スパニッシュ・アパートメント」(2001年公開:第1作目)、「ロシアン・ドールズ」(2005年公開:第2作目)を観ていることが前提になります。「スパニッシュ・アパートメント」は本作の主人公グザヴィエが、就職前1年をスペイン・バルセロナで過ごすために訪れたアパートでのシェアハウス体験記となっていて、青春時代の最後を飾る淡い思い出に、僕自身の学生生活とも重なるところがあって、すごく印象深い作品でした。クラビッシュ監督のコラージュ風な映像と、バルセロナの風景美も見事にマッチしていて素晴らしかった。2作目の「ロシアン・ドールズ」はグザヴィエが30代に差し掛かろうとしたときの、恋の精算記のような一面の作品になっています。僕自身は、1作目のキラキラした感じから、急に悩める30代の現実に突き落とされたような感じがして、作品としても少し低調だったかと思います。1作目のキャラクターがいろいろ出てきたのは楽しかったんですけどね。

そして、迎えたシリーズ3作目。本作は前作のような1作目のキャラクター総登場というファンとしては楽しい場面はなく、あくまでグザヴィエが30代でした決断の延長線というところから描かれていきます。ウェンディとの結婚を悩みながら選択し、子どももできて、それなりに幸せな生活を歩みだしたグザヴィエ。しかし、多感なウエンディはそれには飽きたらず、理想の生活を求めて、子どもたちとともにニューヨークに旅立ってしまう。そして、グザヴィエに待っていたのはウエンディとの離婚という選択肢。それでも愛おしい子どもたちのために、グザヴィエは単身ニューヨークに渡る決意をするのです。

前作が、まだ人生の選択肢を決めかねるという不安定な感じで終わってしまったのに対し、本作はとにかく前を向いて生きていくだけという感じになっているのが、作品全体を明るいムードにうまく仕上げていると思います。作家という自由な生き方をしているグザヴィエにとって、自分の生活のために子どもというのが重要な存在であることが何とも微笑ましい。自分の生き方にこだわろうとすると、ウエンディのようにとかく自分オンリーの頭しかなくなり、子どもたちという存在がどうしても希薄になってしまう。それを本作では、子どもも含めて素敵な生き方を選択しているという描かれ方をしているのが、とても魅力的な40代の生き方に思えるのです。それは親友のイザベルにしても、元彼女のジューにしても同じ。なかなか、こんな聞き分けのよく、可愛い子どもたちはいないかもしれないけど、子どもがあってこそ、自分の生き方が見えてくるという視点もあることに気づかされます。

ファンとしては、お話の舞台は違えど、1作目と同じようなドタバタの構図を意図的に入れているのも嬉しいところ。「スパニッシュ・アパートメント」だけに終わらない、大人の青春劇はいつまでも続いていることを象徴的に描いているシーンだと思います。いいなー、、本作で終わらず、是非50代、60代になったときのグザヴィエも観てみたい気がします。

本作で2014年の鑑賞映画は最後となりました。次回はいよいよ年1回の、今年観た映画の棚卸しをしたいと思います。

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