「マジック・イン・ムーンライト」を観ました。
評価:★★☆
毎年コンスタントに作品を生み出し、5本に1本は何らかの形でアカデミー賞にノミネートされているウディ・アレン監督。近作では、彼自身が自分の監督作で出演することはなくなってきましたが、その中でも彼が従来主演としてやってきた役回りを誰かが演じるということが多いことでも知られています。「ミッドナイト・イン・パリ」だったらオーウェン・ウィルソン、「人生万歳!」だったらラリー・デヴィッド、「僕のニューヨークライフ」だったらジェイソン・ビッグス、、、といったところ。いずれもズケズケとモノは言えそうなんだけど、どこかナイーブな一面を持っていて、本当の意味で正直になれない人間たち。彼らが右往左往することの面白さをコメディとして描きつつ、ハッピーエンドにしろ、バッドエンドにしろ、どこか哀愁漂いながら、アイロニック(皮肉)混じりなところも魅せるというのが、アレン映画ならではというところがあります。アレン映画好きなら、皮肉っぽさを感じながらも、その奥底に込められた人の優しさみたいなものを感じ、毎回劇場に足を運んでしまうのです。
そんな目線で本作を眺めると、これこそ王道のアレン映画だなと思わせる作品になっています。なんたって主人公が華麗なイリュージョンを放つマジシャンであり、職業柄何事も色眼鏡で、信用ならないと世の中をみる男なのです。これはアレン映画のまさに主流ともいえるキャラクターの味付けになっています。それを演じるのは、皮肉っぽさをユーモアたっぷりに演じれるコリン・ファース。ファース演じる主人公スタンリーは友人の希望で、大富豪が熱を入れあげている女占い師ソフィのまじないの真偽を確かめることに。彼女のもつ不思議なパワーをトリックとして信じて疑わないスタンリーだが、彼女の秘密をなかなか解き明かすことができないでいた。そんなスタンリーの心の中には、ソフィに対する別の感情が徐々に芽生えていきます。。
話の顛末にも謎解きというミステリー要素と共に、スタンリーとソフィの間に芽生える恋心を、1920年代のフランス・アールデコ調の様式美を背景に、すごく美しく捉えていきます。全編カラーではありますが、どこかクラシック映画を思わせる雰囲気を感じるのは、映画通を唸らせるような粋な場面(特に、天文台でのシーン)を演出しています。ただ、僕は主役フランキーをコリンではなく、アレン本人に演じてほしかったなと思うのが正直なところ。コリンの演技は完璧なのですが、完璧すぎて演技として遊びを感じることがほとんどないのです。アレン映画の王道を行きすぎる分、この「マジック・イン・ムーンライト」という作品の味を感じられないのが残念なところ。今までのアレン映画が描いてきたところと何も変わりはないので、本作をあえて見る理由づけがもう少し欲しいのです。
真っ当過ぎるというところも、いささか問題であるところがよく分かる作品でした。アレン映画を観たことない人は、また別の感想を持たれるかもしれませんが。。映画って、難しいですね。
次回レビュー予定は、「ソロモンの偽証 後篇・裁判」です。