8月 19

種まく旅人 くにうみの郷

「種まく旅人 くにうみの郷」を観ました。

評価:★★★

2011年に田中麗奈、陣内孝則主演で、大分県臼杵市を舞台に、茶畑に挑んでいく一人の女性を描いた「種まく旅人 みのりの茶」。本作は、その”種まく旅人”シリーズの第二弾作品(ちなみに、この後も第三弾が控えています笑)。僕は、このシリーズはコミックか何かの原作かと思っていましたが、何も関係ない第一次産業支援ムービーなのだとか(後援にも、大きく農林水産省の文字が。。)。そういった金銭的な背景は別にして、前作も陣内孝則演じる奇抜な農水省官僚・大宮金次郎がいい味を出していたので、彼を主役級にしてシリーズ作を構成してもよかったかなとも思いましたが、シリーズ作とはいっても、第二弾は一作目とは切り離された作品になっていました。今回の舞台は兵庫県の淡路島。監督は、前作の塩屋監督から、「月とキャベツ」の篠原哲雄監督にバトンタッチされています。

萩上監督の「かもめ食堂」とかもそうですが、食をテーマにした映画というのは結構万人向けの鉄板作品だなーと思います。この「種まく旅人」シリーズは食とはいいつつも、もっと原料に近い農産物であったり、海産物であったりするんですが、それでもそれらが映画館のスクリーンに現れると美味しそうと思ったりするし、畑を行き交うトラクターや、海苔の養殖場を進む漁船を見ても、やっぱり自然はいいなーと素直に思います。この辺りは、後援している農林水産省の思うつぼにハマってしまうところかもしれません(笑。そういったことを加味しなくても、淡路島が玉ねぎが名産(公開初日鑑賞で、お土産付)ということも初めて知ったし、海と山が共存し、本作で描かれる”かいぼり”という伝統作業が、互いの実りを補完する共同作業になっているというのも知識として知るのは面白いです。劇映画という要素だけではなく、こうした昔からの伝統であるとか、その地域で生きてきたことの業みたいなものを知れるというのは、ドキュメンタリー的な側面もあり、映画として深みを増している部分だと思います。

しかし、肝心の劇映画としては工夫が少ないというか、すごくシンプルにお話がまとめられています。映画の中心として兄弟の対立があっても、最後の最後には分かりあえることは既定路線だし、頭でっかちでしかなかった中央官僚が、実際に地域の人に触れ合うことで変わっていくことも予定調和。何事もブレルことなく進んでいくので、ドラマとしては比較的単調かと思います。だからこそ、前作の大宮金次郎のような突出した面白いキャラクターが欲しかったのですが、そういった変化球が投げれるような人物が、本作には残念ながらいなかったかな。。しいていうなら、日本神話にあるような海彦と山彦の物語のようなところとお話的にオーバーラップするような、突拍子のない演出でも欲しかったところ。お話的には文句をつけるようなところもないのですが、全て美味しそうな農産物と海産物の情景に助けられているような作品のように感じてしまいました。

次回レビュー予定は、「ミッション:インポッシブル ローグ・ネーション」です。

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