「イニシエーション・ラブ」を観ました。
評価:★★★
映画公開当初から、ラスト5分で全てが覆る、、という宣伝文句で煽っていたラブ・トリックムービー。原作は、同じくこのラストネタで130万部を売り上げた乾くるみの同名小説。「SPEC」の堤幸彦監督がメガホンを取った作品になっています。この手の、「ラストですべてが、、、」という宣伝文句を謳う作品というのは、そうでなく何も宣伝しない系(「ユージュアル・サスペクツ」や「シックス・センス」など)に比べて、観る側が身構えてしまう分だけうまくトリックが決まらないことが多いのですが、この作品は結構頑張っていると思います。それも主演の松田翔太、そして前田敦子のカメレオンぶりに尽きるといったところでしょうか。それでも、原作を読んでいない僕は、観てすぐ分かっちゃいましたけどね。
あまり、このラストのトリックについて書くと面白みが減ってしまう(というか、作品的にゼロになる??)ので、ネタバレは避けますが、とはいいつつも、この映画はこのラストがないことにはそもそも成立しないように思います。だから、このラストがあるという設定で考えると、このラストに持っていくまでに結構緻密にプロットを重ねていると思います。大きくは、静岡で出会った奥手な大学生と歯科助手の不器用な恋を描いた第一幕と、遠距離恋愛となって関係が薄れていく第二幕があって、作品的に、この二幕構成をスムーズにつなげることが肝なんですが、一幕単位での描かれ方も緻密だからこそ、全てのネタがばれたときにあっさり感というか、トリックによって物語が薄っぺらくなることがない。得てして、この手の映画はトリックばかりにこだわりすぎて、それ以外のことがおざなりになってしまうことが多いのですが、本作に関しては、ちゃんと各エピソードがしっかり組み上がるからこそ、トリックがちゃんと成立しているという形がしっかりしているように思います。
ネタ的には、観客の誤認識を誘う典型的なミスディレクションな形になっています。こうした形の作品は、その観客の誤認識を分からないように如何に包み隠してしまえるかがキーポイントですが、本作は映像的にはよく見れば違いが分かるのに、観客がミスリードしてしまう(ん、ネタバレですかね笑)ところが、とても映像映えというか、映画向きな作品になっているように思います。ネタが最初から分かってしまった人も、そうでない人も、ラストがどう転がるのか見逃さずにはいられないドキドキ感を最後まで引っ張ってくれるところも、エンタテイメント向けというところではよくできた作品になっていると思います。
次回レビュー予定は、「しあわせへのまわり道」です。
トリックにすべてをもっていかず、地道にシークエンスをつくっているのが好印象
【映画評】『イニシエーション・ラブ』
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