9月 15

トイレのピエタ

「トレイのピエタ」を観ました。

評価:★★★★

手塚治虫晩年の病床日記をヒントに、松永大司監督が脚本・監督を務めたのが本作。題名にあるピエタとは、美術に詳しい人だったら知っているかもしれないませんが、聖母マリア像の中でも亡きキリストを抱える像のことを指す。ミケランジェロなどの作品でも有名ですが、本作でもピエタが象徴的な形で登場してきます。主演はロックバンドRADWIMPSの野田洋次郎、ヒロイン役の印象的な女子高生・真衣を「繕い裁つ人」やTVドラマ「夜行観覧車」で印象的な演技を魅せた杉咲花が演じています。

画家を目指していた園田は、その夢を諦め、窓ふきのバイトで日々をやり過ごす青年。逆に、園田の恋人で、美大の同窓生のさつきは何とかして画家の道を目指すべく、個展開催へといそしんでいた。そんなある日、園田は身体の不調を感じ、病院へと担ぎ込まれる。精密検査の結果、彼は余命3ヶ月ほどの末期の胃がんであることが発覚する。さつきとの間も険悪で、実家の両親にも今更頼りたくない園田は、病院で因縁をつけていた女子高生・真衣に声をかけ、彼女に医者の前で偽装の妹を演じてもらう。最初は風変りな依頼に首をかしげながらも、園田との間の不思議な交流を続けるのだった。。。

人の人生というのは、生まれた瞬間から始まり、いつか終わりが来る。そのいつかというのは誰にも分かるものではない。だからこそ、人は一生懸命に生きるのだけど、世知がない平凡な日常だとそれをいつしか忘れそうになるもの。しかし、人の命に限りがあるからこそ、人は瞬間瞬間で光り輝くものだと、この映画は教えてくれているように思います。短くしか生きられない人も、思いのほか長生きする可能性が見えてきた人も、この映画にはたくさんの生き方をする人が、主人公・園田の前に現れます。彼は自暴自棄になっていた自分の生き方に対し、決して満足いく答えは見つからないものの、その中で自分の生き方を徐々に見つけ出していきます。人生の終わりというのは、その人にとっての生き方を閉じる旅。彼が最期に行きついた”トイレのピエタ”はその象徴であり、だからこそ、ピエタ像は生きていく我々に迫る迫力を魅せてくれるのです。

次回レビュー予定は、「天空の蜂」です。

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