4月 17

繕い裁つ人

「繕い裁つ人」を観ました。

評価:★★☆

池辺葵の同名コミックを、「しあわせのパン」、「ぶどうのなみだ」の三島有紀子監督が映画化した作品。「ぶどうのなみだ」は未見ですが、「しあわせのパン」を観たことのある感覚でいえば、三島監督の味が出た作品ともいえます。古い洋館で、祖母の残した洋裁店を営む不思議な女性・市江。洋裁店に訪れる人や、市江の友人たちの店・自宅の風合いを見ても、とても女性が好きそうな整理整頓が行き届いた、小奇麗な場所ばかり。「かもめ食堂」の萩上監督作品もそうなのですが、とてもお洒落で、シンプルな生活を送る人たちの、とても素敵な映画というのは女性受けしやすいし、こういうジャンルというものを一つ確立してきた感があります。でも、そこからの打破はなかなか難しそうですけどね。

祖母の教えを守り、その人に合った服を作り続けてきた市江。1つ1つ丹精込めて作る服に、祖母の代から慕い、市江の傍にはいつも楽しい人たちが集まっていた。そんな中、市江に大手デパートがバックアップする形で、独自ブランドを作る話を持ち込む藤井。彼も、市江同様に、服の素晴らしさに魅せられた一人だった。ブランド話を一蹴する市江だが、そんな彼女の中にも、徐々に変化したいという気持ちが大きくなっていく、、

素敵な服が、シンプルな空間にたくさん登場し、それを魅力的な俳優陣が面白いお話で転がす。それだけで上記のように、1つのまとまりある作品になっていますが、本作では、そこに一人の女性が成長していく物語を織り込んでいきます。原作は読んでいませんが、この後者の成長物語というのが主軸になるのはないかと思います。ただ、映画化した本作は、むしろ設定されている舞台や演じる俳優に魅力がありすぎて、物語そのものがすごく小さくなってしまっているように思います。主役の市江演じる中谷美紀も下手な俳優じゃないのですが、お話を魅力を十分に伝えているかというと少し疑問符がつくのです。決して予算は多くないのでしょうが、逆に華美になりすぎている周りの要素をもう少し削れば、市江と藤井という二人の話にもっと焦点が合ったように思います。

それにしても、こういう雰囲気の映画は素敵だけど難しいですね。生活感のないような空間に、女性は憧れるのでしょうか??

次回レビュー予定は、「ジュピター」です。

preload preload preload