1月 26

日時:2012年1月25日(水) 19:30-21:30
場所:デジタルハリウッド大学院 秋葉原キャンパス

昨日(1/25)に、まつもとあつし氏著「スマート読書入門」の出版記念セミナーに行ってきました。電子書籍関連ではいろいろな示唆も得れたので、忘備録を兼ねてブロクに書きたいと思います。

著者のまつもと氏とヴァーチャル本棚「ブクログ」電子出版サービス「パブー」を展開するpaperboy&co.の吉田氏、書評ブログ「情報考学」でデジタルハリウッド大学教授・橋本氏の三名で、読書、電子書籍とKeyとした講演、パネルディスカッションが行われました。

講演内容は全てフォローできないので、気になったポイントを中心に書いていきます。

★ソーシャルメディア時代の本の意義

Twitter、Facebook、2chやニコニコなど、ソーシャルメディア全盛の時代。まつもと氏も触れていましたが、特にTwitterや2chなどリアルタイムな情報メディア時代に改めて、知識の集約としての”本”の意義とは何だろうというところからセミナーがスタートしていきました。

産業革命時代、グーテンベルグの大量出版技術から紙の書籍が生まれ、それから本の進化は電子書籍時代まで進んでいないのではないでしょうか? それでも本という形が最初から完成形なのは、昔ならいわゆる口コミによるデマ、今の時代ならTwitterなどのリアルタイムメディアに左右されない知識の集約庫になっているからでしょう。出版というプロセスに著者、編集者などの多くのフィルタが入ること、多くの読者に触れられることで、情報がより確かに洗練されていく。そうした本の特性が、本の本たらしめる部分なのかなと思います。

そういっても、インターネット時代に突入した昨今。それなら本を中心としたコミュニティ形成にインターネットが一役買えることも事実。橋本氏がざざっと、国内外の楽しい本をメインとしたサイト紹介がされましたが、こうしたサービスの向こう側に次世代の本の姿が見えてくるのかもしれません。

<橋本氏が紹介した国内外の読書サービス(メモできたもの)>

◆海外の電子書籍サービス

  • Amazon.comのポピュラーハイライト共有:どこに注目しているかを共有
  • COPIA:電子書籍上でハイライト共有
  • Shelfari, Goodreadsなどの大規模読書SNS:Topの本だと何万レビューがつく
  • bookcrossing:ブックカバーをKeyとした旅する紙書籍共有。日本版もあり。
    ブックカバーでラベル化→本を放す→共有場所に置いていく→ネットでアクセスして感想共有→次の読者へ
  • BookLamp:本の特徴指紋を解析する(BookDNA)
  • Smart E-book Interface(KAIST INC):


    本の厚みを感じるインターフェイス
    →電子ならではのめくり方があるのでは?の模索研究。まだ本らしい進化は続く。
  • BookTrailers:1冊の本についての予告編をつくってくれる
  • Scribd:書き込み可能の読書共有サイト

◆国内の先端書籍サービス

  • ブクログ :吉田氏による詳しい紹介あり。
    →本棚の共有だけでなく、例えば、オンラインでの企画展示のような使われ方もしている(城西大学)
    →スマフォンアプリ化してから、本屋さんでブクログをチェックする人が多くなった
  • 本棚ORG:本棚共有サイト
  • 読書メーター:読書量の共有サイト
  • Qlippy:コメントハイライトと感想共有
  • つなが本屋シェアミー:漫画、小説の好きなコマを共有(スマフォン専用)
  • bookpic:書籍や雑誌の表紙上にコメントできる。落書きを残していくサイト
  • 猫町倶楽部:各地で開催されるリアル読書会(東京、関西、名古屋中心)とヴァーチャルとの融合。面白そうな本のときはちょっと参加したい。
  • Jコミ:著作権が切れた漫画に広告を挟み、広告料を著者と共有
  • 角川ニコニコエース:ニコニコ静画の電子コミック版
  • 書籍POP投稿サイトbukupop:書籍のポップを作って共有
    →書評よりアフィリエイトでもうけられるのでは?
  • e読書ラボ:神保町にある国立情報学研究所のe読書体験型ラボ
  • (おまけ)エア新書:新書の表紙をでっち上げることができるサイト
  • (おまけ)新刊.net:気になる著者の出版スケジュールを登録することができる

★紙書籍に対する電子書籍のこれから

上記のような紙書籍がインターネットサービスと結合し、新たな方向性を持ち始めた中、一方の電子書籍がどのような進化をたどるかが注目を集めるところです。iPadは十分広がり、電子書籍元年と言われた2010年から正直爆発的に電子書籍が広がったという感じはない現在、電子書籍に関わる人たちの模索は続くところです。

講演の中でもパネルディスカッションでpaperboy&co.の吉田氏がKeyとなる話をされていたので、メモしときます。

◎電子化という進化の方向(ゲームの世界とのアナロジー)

  • 電子書籍がコメント・感想だけでなく、動画、音楽というメディアミックスに。
  • ゲームの進化とのアナロジー
    アナログ(オセロ、トランプ、ボードゲームの世界)
    →デジタル化(ファミコンからPS3)
    →ネットワーク化(MMOG:Massively Multiplayer Online Gameからモバゲーまで)
    と同じ進化を辿るのでは?

◎電子書籍の未来を語るKey(体験型と同時性)

  • 体験型:2chサイトから発展する物語→紙にすると面白くなくなる
    →ここでの面白さは著者と一緒にドラマの中を体験するところ
    「電車男」から「ゲームセンターで出会った不思議な子」まで
  • 同時性:ライブとTwitterとの融合(発表会でも使われる)
    →コメントに対して、出演者が即時に反応できる同時性

個人的にはiPadなどの書籍(タブレット)端末が普及し、電子化されることで何でもできるようになったことが、逆に電子書籍の進化を妨げているのかなとも思います。それには小さい頃から紙の書籍になじんだ人が、いろんな形で表現される電子書籍というニューメディアに慣れしまないリテラシーの部分が大きいと感じます。

とはいうものの、スマフォンの普及でソーシャルゲームがここまでに拡がるとも思わなかったので、どこかでパラダイムシフトが起こるのは間違えないです。それを引っ張るのはどこなのか? どこにビジネスチャンスがあるのか? 電子書籍はまさに今が面白い市場といえるかもしれません。

preload preload preload