6月 25

俺俺

「俺俺」を観ました。

評価:★★☆
(★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高で、★が最低)

ちょうど作家の平野啓一郎さんの「私とは何か-「個人」から「分人」へ」という新書を読んでいたときに観た映画で、まさに平野さんの言っている”分人”を体現すると、こういう映像作品になるのではないかと思ってしまった。本のほうはまた機会があれば紹介したいのですが、簡単に言ってしまうと、「分人」とは複雑な現代社会における”個人”と定義できない、個人が見せるあらゆる顔のことを指している。オレオレ詐欺なんかはまさにこの分人を利用した詐欺で、個人の分人としての一面をうまく見せる詐欺のことになる。

この映画は、ひょんなことからオレオレ詐欺をしてしまった主人公が、詐欺のときに見せた分人が文字通り、個人から逸脱して1つの個人が誕生してしまうという奇奇怪怪な作品になっている。そうした生まれた新たな個人に普通なら驚くはずだが、周りからみれば一個人であるし、ドラマとしても主人公の世界が入れ替わるというお話のトリックをうまく使って、この不思議な物語をつないでいく。映画中盤で増えていく均の存在がおかしくないのは、綿密に構築された脚本の妙にあるのだと思う。

ただ、こうして組み上げた世界にどう決着をつけていくかを、あまり考えていないのが惜しい。振り上げた拳の下ろす先を一生懸命考えてはいるのだが、考えきれないまま安易なラストにしてしまったように思えてならないのだ。なぜ、あれだけ均が増えて集まる必要性があったのか、観客は知らぬまま宙ぶらりんの状態のままで、後味が悪い印象が拭えない。

preload preload preload