9月 04

少年H

「少年H」を観ました。

評価:★★★★
(★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高で、★が最低)

1997年にベストセラーとなった妹尾河童の同名小説の映画化作品。確かTVドラマ作品としても映像化されていると思いますが、97年出版と15年以上の年月を経っての映画化というのは、最初に話を聞いたときに”なぜ今?”という感じを拭えませんでした。それでも水谷豊夫婦の共演というのも話題になっていますし、中高年を中心にある程度の観客層は取り込める固い作品になっていると思います。でも、本作は全ての年代の人に観て欲しいオススメ作品になっています。

戦争時代というのは、一種の社会中心の全体主義に狂乱した時代だったと思います。全体主義だからこそ、そこに歯向かうことは許されなかったし、歯向かうことがなかったからこそ、よりおかしな方向に向かうことになったと思います。その中でも人間性を押しつぶされることなく、人間らしく生きた人たちがいた。この「少年H」という作品は、そんな生き方を貫き通したHの父親・盛夫を息子・肇の目線から描いている作品になっています。

盛夫のもつ人間性の真摯なまなざしを、水谷豊が気持ちいいほど好演しています。それより少年Hを演じた吉岡竜輝が素晴らしい。快活かつ純朴で古風な感じを持つ昭和男子を見事なほどに演じ切っています。話のつくり方も全然古めかしくないなーと思ったら、「ALWAYS 三丁目の夕日」などで力を見せている古沢良太が脚本を手がけていると聞いて納得。彼の本は温故知新というか、どんな時代を舞台にしても洗練したうまい組み立てをしている思います。

ただ一点、戦後の盛夫の抜け殻にようになった描写がイマイチ曖昧すぎるかと思います。ここだけHとの絡みが空周りしています。

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