12月 05

ウォールフラワー

「ウォールフラワー」を観ました。

評価:★★★★☆

アメリカ人はとにかくパーティー好き。何かにつけてやっているホームパーティーというものには出たことはないけど、この映画のタイトル、ウォールフラワーは、そんなパーティーには必ずいる”壁の花”を意味しているというのは理解できます。いろいろな懇親会とか出ることはあるけど、僕もどっちかというと”壁の花(花かも微妙だけど)”。本作は、そんな”壁の花”だった青年が、ある出会いから壁から巣立ち、自らを発見していく青春劇となっています。

大人数が集まる場、特に中等教育までの学校という空間は悲惨だと思います。いろんな人がいるというのは一見多様で素晴らしいともいえるんだけど、特に子どもから大人へと過渡期では、学力も、体力も、趣味も、嗜好も違う人たちが集まって、しかもお互いの距離を取り方が分からない子どもだったら、好きな者同士のつながりは強いけど、反発し合う同士の乖離も半端ない。そんな空間で孤立してしまったら最悪。あとは目立たないように身を潜め、3年なり、5年なりを平穏無事に乗り越えるしかない。”壁の花”になる人はなりたくてそうなるのではなく、なってしまう理由も必然なのだ。

でも、そうした”壁の花”になって学校生活を無事に終えても、長い人生というスパンで見ると、人間としては成長しない。傷つくことを恐れていては自分らしさを獲得できる青春時代というチャンスを失い、いつまでも自分を見つけることはできないと思うのだ。”壁の花”だったチャーリーは勇気を振り絞って、上級生パトリックに声をかけたところから人生が大きく拡がった。無論、それによって傷つき、しかも自分らしさの根幹を揺さぶる危機にも対峙しなければならなくなる(正直、ここまで描くかとも思ったけど)。でも、いい面も悪い面もはっきり掴めて、初めて自分というアイデンティティーを確立する。もう、それは誰にも侵すことができない領分なのだ。

青春劇の爽やかな雰囲気は作品全体にみなぎっていてよいです。「パーシー・ジャクソン」シリーズで主役パーシーを演じており、本作の主役チャーリー役も務めているローガン・ラーマンはもとより、「ハリー・ポッター」シリーズのエマ・ワトソン、「少年は残酷な弓を射る」のエズラ・ミラーなど、年代的にも大人へと大きな成長を見せようとする俳優陣も素晴らしい演技を見せてくれています。晩秋に爽やかな風を届けてくれる作品です。

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