12月 06

かぐや姫の物語

「かぐや姫の物語」を観ました。

評価:★★★

スタジオ・ジブリの作品といえば、子どもたちには「となりのトトロ」が未だに人気だけど、僕は高畑監督の「平成狸合戦ぽんぽこ」を観て欲しいなと思うくらい高畑監督ファンでもあります。宮崎監督は「風の谷のナウシカ」は別にして、基本はとてもあっけらかんとした明るめな作品が多いんだけど、高畑監督はバッドエンドというか、寂しい終わり方をするという作品をあえて取り上げて、人生のもつ陰と陽の部分を巧みに描き分ける。そのもっとも代表的な作品は「火垂の墓」なんだけど、前作の「ホーホケキョ、となりの山田くん」も元ネタが4コマ漫画という短い筋の作品の中で、日常生活にある陰の部分をうまくまとめ上げた作品でした。

本作、「かぐや姫の物語」は日本古来の伝承物語、”竹取物語”をアニメとして仕上げた作品になっています。”かぐや姫”としたおとぎ話でもそうですし、学校の古典の授業でも”竹取物語”として習うことが多い作品なので、話の筋は多くの方がご存じだと思います。映像作品としては構想から十数年かかっているとか、水墨画風のタッチに何十億もかかっているとか話題になっていることもありますし、確かに日本古来の話を芸術画としても美しく見れるアニメ映画になっていると思います。ただ、お話としては”かぐや姫”の物語を越えることがないので、話の中での驚きや展開の楽しみを感じることができない。話が決まっているものとして、音楽なり、絵なりをとことん楽しむことに尽きるしかない作品になってしまっているように思います。

ただ、月世界が仏教でいう冥土のような穢れのない世界観で描かれているのが面白かった。日常生活を生きる私たちには穢れが多く、罪深いのだろうけど、その中だからこそ愛することの楽しさ・面白さを知ることもできる。仏になるということは一切の穢れを捨て去った美しき人になることだが、はたしてそこに幸せを感じることができるのだろうか。。

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