1月 10
データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」

データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」

昨年(2013年)の2月にハーバード・ビジネス・レビューにて、”データ・サイエンティストほど素敵な商売はない”と魅力的な仕事ということで紹介されてから、「ビックデータ分析」、「データ・サイエンティスト」というのが、IT業界のバズワードとして人気を博してきた(最近は少し落ち着いてきた感がありますが)。インターネットを中心にIT業界が活性化し、PCの高性能化はもとい、手持ちのモバイル端末でも高品位の処理が可能になってきた。LTEで通信も高速になり、ストレージも大容量化の時代、情報の通信&蓄積は技術革新とともに安価にもなりつつあります。

これだけ分析ブームでもありますが、ITの世界でももともとデータアナリストとか、システムアナリストと呼ばれる人は結構いたと思います。前者は広告や商品の効果測定とするリサーチ会社のイメージだし、後者はSIをする中でのコンサルタント的な立場で業務の分析などをしていたイメージです。その中で、”データ・サイエンティスト”が職業として出てきたのはなぜなのか? まず、この「データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」」では、そもそもサイエンティスト=(科学者)とつけるだけに、従来のアナリスト=(分析者)とは違う、「分析力」とは何なのかという言及があります。

大量のデータが生み出される現代社会で、アナリティクスとプランニングの融合がいかに強力な存在となるかを示しているのである。(P.106)

アナリストが単純な分析しかしないのに対し、「分析力」がある本当のサイエンティストとは、そこからプランニング(計画)が導かれる人だと定義をしています。

じゃあ、それを実際にどのようなプロセスで行えばいいのかについては、SMARTな目標設定というのが述べられます。

(SMARTな目標設定とは、)・具体的(Spectific):目標は、達成しようと思っているものを明確かつ具体的に述べなければならない。・測定可能(Measurable):目標に到達しつつあるのか、そうでないのか、追跡できなければならない。・達成可能(Achievable):現在の延長線上で達成できなければならない。・現実的(Realistic):今手元にあるリソースで本当に達成できるものでなければならない。・時間設定(Timebased):目標をいつ達成するのかという基準がなければならない。(P.240)

その例の1つとして、有名なUPS(運送会社)の例が述べられます。

UPSは業務オペレーションの優位性の上に成り立っている企業である。彼らはあらゆる業務を最適化しているのだ。例えばUPSのトラックは、ほとんど左折をしない。左折するときに発生する待ち時間を回避することで、毎年数百万ドルのコストを削減できるという計算結果が出たことから、左折をするのはそれ以外に選択肢がない場合にのみとしたのである。 (P.268)

分析をするだけではなく、それを実施することで何か変わるのか。そして変えたことでの変化量を常に計測することで、継続的な業務変革につなげていく。まさにプロセスを提案するだけではなく(ここまでだとサイエンティスト止まり)、プロセスを変革していくイノベータにならないと意味がないのかなと思います。

データの取り扱い方もそうですが、単純に数字や文字の並びを分析するだけでなく、その裏にどのような現象が潜んでいるかを知るというのは、僕自身、学生時代の卒業研究でやっていた材料研究やプラズマの物性研究に近いなと感じました。データとしては確かに数値で上がってくるんだけど、それは計測誤差なのか、想定している現象の外からくる雑音なのか、そもそもの想定とは全く違う現象がそこで起こっているのか、、数字1つでも正しさをとことん考え抜く、それが単に数字を整理するだけのアナリストと、複数要因を想定する「分析力」を持ったサイエンティストの違いなのだと思います。

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