1月 30

小さいおうち

「小さいおうち」を観ました。

評価:★★★★★

「男はつらいよ」シリーズや「学校」シリーズなどで知られる山田洋次監督作品。ここ数年、山田洋次監督の作品はずっとスクリーンで観ているけど、近作の中では断トツにオススメできる作品になっていると思います。「男はつらいよ」シリーズを1つも観たこともないので、偉そうなことはいえませんが、山田監督というのはずっとノスタルジーを撮る監督というイメージでした。「学校」シリーズもそうだし、「たそがれ清兵衛」から近作に続いた時代劇のシリーズといい、ある時代の人の情というのをどちらかというと長閑な感じで引き出している感じがするのです。昨年の邦画ベスト10の中にもいれた「東京家族」も、舞台は現代という中で回りながらも、小津監督の「東京物語」に献呈しているだけに少し古めかしいところも感じざるを得なかった。それが本作では戦前戦後という昭和という少し昔の話でも、モダンな感じに作ってあるのが、山田監督作品とは思えない洗練された味を感じることができるのです。

それにしても、僕は会話劇というのが基本的に好きなのだと思います。2012年の邦画ベスト1にした「わが母の記」もよく喋る映画で好きだし、本作も昭和初期の奥様劇なだけに、松たか子をはじめによく喋る女性陣がたくさん登場する。その中でお手伝いに入る黒木華演じるお手伝いが寡黙な女性というのが、登場させるキャラクター構成として、うまい対比ができていると思います。その中で煌びやかな昭和初期と裏腹に、戦争が人の中に暗い影を落とす。よく喋る劇はそのままに、会話のトーンの中に徐々に暗く悲しいものが含まれてくるようになってきます。その中で悲しい別れがあり、それぞれの人の心に負い目をつくることになり、戦後に生き残った人にも悲しい影をつくっていく。原作はあるもの(中島京子の同名小説)の、これは山田監督の形を変えた反戦映画なのだと思います。

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