2月 17

17歳

「17歳」を観ました。

評価:★☆

フランソワ・オゾン監督の2013年の新作。カンヌ国際映画祭でもコンペ部門に選出された作品なんだけど、昨年の「危険なプロット」に比べると、だいぶピントがボケた作品かなと思います。オゾン監督の良さって、暗めなシニカルな話でも、アイロニーというか、どこかブラックな笑いを込めたり(昨年の「危険なプロット」や「焼け石に水」など)、悲しげな作品でも、想像力を駆使した映像プロットを見出して、作品に華をつけたり(「まぼろし」や「ふたりの5つの分かれ路」、「ぼくを葬る」)するところが、僕は好きなんです。映画だからこそ、話(物語)をどう魅せて、見せるか、という工夫をしなければならない。それをいつも全力でやってくれている監督なんだというイメージなんで、僕はオゾンが好きなんです。

そのイメージで、この「17歳」という作品を見ると、かなりがっかりしてしまうと思います。話は17歳を迎える多感な少女が、あるひと夏の恋とセックスを境に、セックスというものの心と身体とのバランスを崩し、娼婦・売女という危険な世界に足を踏み入れていくという物語。話がこんな感じで、映画としてもほぼ何の工夫もなく、そのまま進んでいくという感じです。セックスシーンが過激というわけでもなく、バランスが崩れていく内面的な崩壊も、特に描写が工夫されているわけでもなく、何となく物語が進んでいく。ここにいつものオゾン作品らしさが見られないのは、だいぶ物足りないなと感じてしまいました。

それでも、主人公イザベルと心を交わす客ジョルジュとのやり取りはちょっと心奪われます。イザベルが際限もなく、セックスという行為を行為としてしか感じられなくなったひと夏の恋、、それはイザベルの本当の初恋ではなく、ひょっとしたらジョルジュとのセックスの後のやり取りが、彼女が感じた初めてのやすらぎ(愛情)ではなかったのではないかと思うのです。とかくセックスしか頭にない思春期頃の恋というのが如何に成就するか(成就しないとしても、よい経験となるか)で、その後の恋の仕方が変わってきてしまうのは考えれば少し恐ろしいこと。そう考えると、テーマとしてはオゾンが好きそうな作品だったのかなとは何となく思います。

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