2月 24

ダラス・バイヤーズクラブ

「ダラス・バイヤーズクラブ」を観ました。

評価:★★★★★

カウボーイというと、西部劇を思い出すので、ちょっと昔なイメージが拭えない。日本でいうと、武士<サムライ>が現代にいないような感じがするのと同じ感じだと思います。でも、武士はいないかもしれないけど、サムライ魂というのは日本人には宿っている。この映画、「ダラス・バイヤーズクラブ」も、カウボーイ魂<ソウル>を現代に復活させた男の話です。

本作が物語のメインとして取り上げているのは、エイズ問題。僕自身がちょうど思春期(1990年代)頃には、性教育が中学・高校で盛んに行われてき始めてきて、同時にエイズについても正しい知識をもつ教育というのが結構行われました。でも、1980年代まで遡ると、エイズはまだ同性愛者がなる病気だとか、患者に触っただけでうつるなど、誤った知識が蔓延していて(それも、不治の病というイメージが先行し過ぎていたこともあるけど)、エイズ患者や発症源となるHIV陽性と診断された患者にとっては辛い社会であったと思う。でも、この映画を観て驚くのは、そうした社会的な差別以上に、AZTなどの抗エイズ薬に絡んだエイズ治療においても、製薬会社やFDA(米・保健福祉省)の力学が働いて、患者のための治療が進まなかったという現実にとても驚かされた。

そうしたエイズ治療に風穴を空けるべく立ち上がったのが、本作の主人公・ロンなのだ。いや、正確にいうと、彼自身も避妊をしない危険なセックスをし、HIVポジティブと診断され、余命ひと月と診断された自らの命を延ばす術を様々考え始めたのがきっかけで、あくまで善意では行動していない。お話としていいのは、自暴自棄だった自らの行為を改めるといったことは全くせず、単純に自分を被験者として、新しい治療方法をお金儲けにつなげていくという、いかにも粗くれなストーリーになっているところだ。しかし、その中でも様々な人との出会いが、ロンの人間性も徐々に変えていく。こうしたロンの粗っぽさと、心に芽生える優しさが、アウトローなカウボーイ像と見事につながっていくのだ。

ロンを演じたマシュー・マコノヒーの、激ヤセした体当たり演技がいい。演技の幅自体は「ウルフ・オブ・ウォールストリート」のディカプリオのほうが上かな(マコノヒーは「ウルフ・オブ・~」にも出てるけど)と思いますが、とことん役に没頭しているのは、本作のマコノヒーのほうが素晴らしいと思います。西部劇は数が激減してますが、現代を舞台とした新しいカウボーイの姿を是非、劇場で。

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