2月 25

大統領の執事の涙

「大統領の執事の涙」を観ました。

評価:★★★

ホワイトハウスで7人の大統領に仕えた執事を主人公にした物語。実話にインスパイアされたという話なので、全て100%実際の物語ではないのかもしれませんが、アメリカだけでなく、世界を掌握する人物に仕えたというだけで、ドキドキワクワクするストーリーができるのではないかと感じてしまいます。でも、本編を観ると、全体的になんかサラッと終わってしまっている印象が拭えませんでした。無論、7人の大統領の個性を伝え(フォード大統領だけは描かれない)、それに主人公セシルがどうドラマとして絡んでいくかを描かないといけないので、1つ1つのドラマが薄くなるのは必然なのかもしれません。それに1つ芯となるなるテーマが、黒人たちをはじめにした有色人種の差別問題が取り上げられているのですが、これも後半、政治臭い方向に進むので、映画作品としてどうなのかなーと思ってしまいます。

それでも映画を観て、改めて気づかされたのは、僕が生まれる10年くらい前まで(1960年代後半)実質的に黒人差別の問題は、アメリカ社会では普通にあったんだなと感じたことです。「42」でも書いたようにケネディ大統領の尽力による公民権法の成立が1964年、過激指導者マルコムXの暗殺が1965年、キング牧師の暗殺事件が1968年なので、法律としての制定後も、普通に平等社会として成立するまでが約10年スパンかかるということです。今では当然と思われていることが、ほんの少し前までは当然ではなかった。そう思うと、オバマ大統領の登場というのは、黒人社会にとっては私たちでは感じられない画期的なことなのかもしれません。

作品中にも指摘がある「夜の大捜査線」で、シドニー・ポアチエが黒人として初めてのアカデミー賞を獲得しましたが、黒人目線で描く作品というのは、本作までなかったように思います。大統領にまつわるドラマというよりは、黒人の目から見る近代史という捉え方で観たほうがしっくりする作品なのだと思いますが、それが日本でこの映画を観るターゲット層に合っているかといわれると微妙な感じがします。

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