4月 01

オール・イズ・ロスト

「オール・イズ・ロスト 最後の手紙」を観ました。

評価:★★★★

春なので、新社会人・新入学生の季節だが、新しい職場・クラスになったときに一番大事だとよく言われるのが、可愛がられる能力だ。最近では、これを関西流でいうところの、ツッコまれ力というものに該当するらしい。そんなツッコまれ力満載で、それが作品の魅力になっている不思議な作品が、本作ともいえる。誤解がないように先に言っておくが、作品の体裁云々は、中年壮年層に人気が高いロバート・レッドフォードが主演で、お洒落なミドル層が見そうな作風に仕上がっている。海の底から見るアングル(多分、CGだと思うけど)も、海が舞台なことを彷彿とさせる素晴らしい絵作りで、これを観るだけでも入場料の価値は十二分にある。問題のツッコまれ力があるのは、お話のほうなのだ。

物語としては、スマトラ島沖で遭難したある男の話になっている。貨物船の大型コンテナが、その男に乗っている大型ヨットの側面に激突。ヨットの側面が大破して漂流する羽目になる。この漂流となった時点で、普通なら生き残るための術を追い求めるか、「キャスト・アウェイ」のトム・ハンクスばりに、とりあえず最初は絶望するところから始まるのが普通だろう。それが、この男はまず自宅屋根を修理するような感じで、まずは大工道具を取り出して、のんびりと修理をするところから始まる。この危機意識のなさが最初のツッコミポイントだ。修理中も、どんどん船室に水が入ってくるが、室内の例えば無線機とか、海水から退避させておくこともせず、延々と修理だけを終えるように進めていく。それでいいのか、、というのがセカンドツッコミポイント。そして、嵐の中でヨットが沈没しないように操るということもせず、船室にずっと隠れてしまう、、、そんな生き残るためのサヴァイバル行動が後手後手になってくることで、男はどんどん追い詰められるのだ。

この映画の教訓は、ずばり危機意識というものが人が生き残れるか否かを決める最大要素だと思い出させてくれることだろう。地震列島である日本に住む私たちは、小さい頃から避難訓練などで危機意識を高める訓練をしているわけだけど、いざその状況に追い込まれたときに冷静でいながらも、生き残るために次にやらないといけないことを考えられるかというと、この映画の男のようになかなか動けるものでもないだろう。生き残るためのセルフリスクマネジメントをどう取っていくか、、映画の本筋とは違うかもしれないけど、そんなことに気づかせてくれた作品です。

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