4月 10

白ゆき姫殺人事件

「白ゆき姫殺人事件」を観ました。

評価:★★★★

湊かなえの同名小説を、「鴨とアヒルとコインロッカー」の中村義洋監督によって映画化した作品。湊かなえ作品は優れた映像美とトリック劇で、アカデミー賞の外国語映画賞日本代表になった中島哲也監督の「告白」が衝撃的だったが、テレビドラマシリーズの「夜行観覧車」や「贖罪」など、人間の内面を鋭くえぐりながら展開していくミステリー劇は超一流な作品を生み出す作家さんだ。そんな彼女と、「鴨とアヒル~」で群像描写が巧みな中村監督ががっちりとタッグを組んだ作品が、面白くないわけはない。観る前から、期待度十分で鑑賞できた作品でした。

そんな本作はゴシップエンターテイメントという宣伝冠がついているように、ゴシップ=「人の噂話」と殺人劇が絡んでいくミステリーとなっている。ある女性の殺人事件を起点に、人の噂が噂を呼び、容疑者として疑われる城野美姫とはどんな人物なのか、結局何が真実なのか、、様々な話が重厚的に重なりながらも、全体としてシンプルな演出にうまくまとめられているのは、中村監督の力量を感じることができます。

結局、人ってなんなんでしょうね(笑)。内面的なアイデンティティーはありながらも、それも周囲の人や環境によって、一定状態ではなく、どんどん変化していくもの。それに外面的な人の印象(「○○さんは、こういう人」)は人でしか作られるものでしかなく、複数人いれば、その人数分だけ、その人の外面的な印象が重なってくる。それに対して、真実というのは1つでしかないので、ゴシップだけに頼ると情報はどんどん不定なものになってくる。ネット社会で情報が大量、高速で飛び交う今だからこそ、こうした事件がありふれる危険があるのかなと観ていて感じてしまいました。

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