5月 07

そこのみにて光輝く

「そこのみにて光輝く」を観ました。

評価:★★★☆

文学界の逸材といわれながら、各文学賞を受賞することなく、41歳で短い生涯を終えた佐藤泰志の同名小説の映画化作品。同じ佐藤作品では2010年に熊切監督によって映画化された「海炭市叙景」が、映像作品としても、観終えた後に読んだ原作小説も素晴らしい作品だったけど、本作も、「海炭市~」に感じられたような寂れた地方都市で、もがきながら人生を営む人々を扱った作品になっている。

僕は、ここ数年住んだ関西にしろ、今住んでいる東京にしろ、いわゆる大都市圏というところに住んでいて、地方都市の特色というのを少し忘れています(前住んだのは石川県まで遡らないといけないけど)。当然、大都市に比べて地方は人口が少ないので、そこで構成されるコミュニティというのは小さくなる。小さいコミュニティはよくいえば、全てのメンバーの顔が見えて安心できるけど、悪くみると、いつまでも同じメンバーの中から抜け出すということはできにくい。ヒロインの千夏にしても、夜の商売に手をつけ、そこから抜け出したいと思いながらも、家族のことや、一度踏み入れた世界から抜け出すことができない。達夫との出会いによって、毎日の生活は少しずつ変化しながらも、結局は抜け出せない呪縛の前に涙するしかないのだ。

達夫を演じる綾野剛と、千夏を演じる池脇千鶴の激しい濡れ場があるが、それが全然いやらしく見えないのは、作品全体が真摯な姿勢で作ってあるからだと思う。観ていて引き込まれる力強さは感じるものの、物語自体は古典的というか、古くからある結論に進んでいくので新鮮味がイマイチ感じられないのが難点といえば難点。本作を感動した人は、是非、「海炭市叙景」のほうも観てもらいたいなと思います。

今回から、次回のレビュー予定を書いていきます。

次回レビューは、「神宮希林 わたしの神様」です。

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