5月 12

とらわれて夏

「とらわれて夏」を観ました。

評価:★★★★☆

ポスターや題名を見ると、ベタベタな昼メロ映画だと思われそうですが、実に優しい気持ちになれる素敵な作品でした(これは邦題も含めた宣伝の仕方がイマイチなんだと思うけど)。「JUNO/ジュノ」や「マイレージ・マイライフ」などを手掛けるジェイソン・ライトマン監督作品だけど、この人は父親のアイヴァン・ライトマン監督(「ゴーストバスターズ」、「デーヴ」など)とやはり家系は一緒というが、父親譲りのどこかユーモラスさが視点がありつつも、人の心をどこかザワザワさせる不思議な感じの作品に仕上げるのがとても上手いと思います。出世作となった「JUNO/ジュノ」はどちらかというとユーモラスさが中心になっているけど、「マイレージ・マイライフ」や僕の大好きな「ヤング≒アダルト」は、人の心に抱える痛みを、人生のユーモラスさに置き換えて優しい視点に変換してしまうという巧みな業を見せてくれています。この力量はすでに父親以上。とても素晴らしい才能を持ち、かつ僕の好きな監督さんリストに堂々加わっています(笑)。

翻って、本作を観てみると、従来のライトマン監督作品にはなかった、ユーモラスという部分が全くない真面目な作品になっています。ジェイス・メイナードという人が書いている原作モノであるということもあるかもしれないですが、作品通して、どこか触ると壊れてしまいそうな、繊細なストーリー構成になっています。脱獄犯と彼を最初は脅されながらも、徐々に心を開いて、生活を共にすることになった親子。前半は脱獄犯に何をされるか分からないという恐怖が、後半は迫りくる警察を感じながら、どう逃避行劇を続けていくかというところが、この妙な作品の緊張感というのを生み出していると思います。

ですが、この作品の凄いのは、そうした緊張感を持続させながら、登場人物それぞれの微妙な心の移り変わりというものを着実に捉えていることでしょう。これがラストの描写(書きたいけどネタばれなので書かないですが、、)につながってくるのです。緊張感がほどけ、もう優しさ一色に包まれるラスト。客観的に見れば、小さな優しさなのかもしれないですが、こうした些細な人の想いというのが、愛という1つのドラマを生み出しているということを教えてくれる作品になっています。

次回レビュー予定は、「ネイチャー」です。

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