7月 22

ぼくたちの家族

「ぼくたちの家族」を観ました。

評価:★★★★★

「川の底からこんにちは」で注目され、昨年は日本アカデミー賞に輝いた「舟を編む」を手掛けた石井裕也監督によるホームドラマ。石井監督は、昨年の「舟を編む」でもそうだったけど、真面目に、まっすぐに生きる人たちの可笑しさを描くことがとても上手い。真面目にやっているようで可笑しい、可笑しいようで実は真面目って、人間的な魅力にすごく溢れている人だと端的に思います。それを石井監督は、この世の中でが誰しもそんな面があると気づかせてくれる作風に仕上げるところが凄い。本作も、ある家族の母親が病気に侵される悲劇ではあるのですが、どこか可笑しさ、ユーモラスさが溢れる人間像を描いています。

僕は、この作品を観ていて、昨年の山田洋次監督の「東京家族」と、ある意味すごく真逆な作品だなということを感じました。「東京家族」は以前の感想文にも書いたように、今の家族を描きながらも、どこか昭和の粋を感じる、現代社会では少し桃源郷(ありえないような美しい家族像)をあえて描くことで、今の家族の在り方を問うた作品でした。逆に、本作は今の家族像に近いところを描いています。今の家族って、父親、母親、子どもという枠にはまらない、どこか一人一人が個になりすぎているように思うのです。だから、子どもであっても親に頼ろうとはあまりしなかったり、逆に親が子ども以上に甘くて、世間的には失敗していたりというのはよくあることだと思います。本作は、そんな個々の人間のだらしなさを切々と描きながらも、それでも家族であることに迫るという、まさに「東京家族」とは逆のアプローチをしているのです。

でも、映画のラストでは家族であることの温かみをしっかりと描いている。単純に血がつながっているだけの関係ではなく、個々が自律している社会であっても、家族の良さみたいなところは変わらないんだなということを感じさせてくれます。それに石井監督の独特のユーモアも役者陣がしっかり演じきっている。これは今年上半期の邦画では、間違えなくベストな作品だと思います。

次回レビュー予定は、「怪しい彼女」です。

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