8月 25

グランド・ブタペスト・ホテル

「グランド・ブタペスト・ホテル」を観ました。

評価:★★★★★

「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」、「ライフ・アクアティック」のウェス・アンダーソン監督作品。アンダーソン監督の持ち味といえば、なんといってもアンダーソン流のキャラクターの作り方だろう。少女漫画的ともいえるだろうか、登場する世界や登場人物を極端なまでにカリカチュアした(特徴づけした)色合いをつけ、コミカルに独特の世界観を拡げていくという手法は、見ている感じだと映画界では誰も真似できない(北欧映画の色合いに近いけどね。カリウスマキ監督とか)と思います。ところが従来の監督作品は、その特徴的な世界をつくることに満足してしまって、話はゆるいギャグを織り交ぜるだけという歯ごたえのないものだったが、本作は力の入れようが従来とは違う、アンダーソン監督の力量がようやく垣間見えた作品になっています。

本作のいいところは、従来のアンダーソン監督の持ち味は損なうことなく、そこに物語のもつ哀愁がうまくエッセンスされていることだろう。ある作家の語り部をもって語られる少し昔のお話という設定になっているのも、映画の世界の中でミステリアスな話を聞けているようでいい。影絵調の演出や登場する世界の造形美にしても、まるで楽しい絵本をめくっているような面白さがある。でも、その楽しい演出の根底にあるのはムッシュ・グスタフ・Hと、ベルボーイ・ゼロとの世代を超えた友情物語であることが、この映画を心底面白いものに仕立てているのです。

レイフ・ファインズ、ジュード・ロウをはじめ、数々のキャラクターが出てきますが、殺し屋も含めて、憎めないのもいい。演じている役者も、それぞれのキャラクターを十分理解して楽しく演じていると思います。そして、何とも言えないのがラストの哀愁。過ぎ去ったミステリアスながらもゴージャズな日々が、それぞれの思い出として、物語として、次に継承されていく不思議。物語好きな私としては、この味わいの深さこそ、多くの人の味わってもらいたいと切に感じました。

次回レビュー予定は、「GODZILLA」です。

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