9月 02

マンデラ

「マンデラ 自由への長い道」を観ました。

評価:★★★★★

昨年(2013年)の12月に95歳という大往生で亡くなった、ネルソン・マンデラ氏。彼の没後くらいから、生前の彼の功績をたたえる作品が、映画やドラマ、トリビュートの作品なども含め、数多く出されています。南アフリカ初の黒人大統領という偉業とともに、同国で長く続いた人種隔離政策アパルトヘイトに対する反対活動を生涯通じて行ってきたということは、歴史などでも習うことではありますが、実際に彼の人生の中でも、いかに苦難の道程であったかというのを、映画は本当に地味とも思えるシークエンスの積み重ねで描いていきます。しかし、1つ1つを気を抜かない描き方をしていくことで、この地味とも思える真面目さが、そのままマンデラ氏の真摯さをうまく浮き上がらせているとも思います。27年という長き(というか、人生の1/4ですよ)に渡る獄中生活でも、決して信念を曲げることも、諦めることさえもしなかった彼の偉大さというのがスクリーンを通じて伝わってくる秀作になっています。

興味深いのは、諦めない活動を続けてきたマンデラ氏の陽の部分だけではなく、生き別れてしまった息子への想いや、活動の中で彼を支えた妻との愛情も決して容易いものではなかったという、どこか完璧でもない人間らしいエピソードを自然に織り交ぜていることでしょう。長期化する獄中生活の中でも、心折れそうになる瞬間を何度も迎えていることも、ありのままに描かれています。その中でも決してめげることなく、暗くなることもなく、人生を常に前向きに捉えていたことが、長きに渡った獄中生活を生き延びさせた結果となった。このことは多くの苦境を迎える現代人にも、参考になることろは多いのかなと思います。

地味なエピソードを積み重ねたのちに、最後のラストシーンのまなざしが非常に優しくて素敵。「おじいさんと草原の学校」で力量を見せた、ジャスティン・チャドウ監督の持ち味となる部分でしょう。厳しい現実に負けず、乗り切った先にある幸せを優しく描いたこのシーンは、今年の映画作品の中でもピカイチかもしれません。

次回レビュー予定は、「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」です。

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