9月 04

パガニーニ

「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」を観ました。

評価:★★★

18~19世紀頃に、イタリアに現れた天才ヴァイオリニスト、ニコラ・パガニーニの生涯を、「不滅の恋/ベートーベン」のバーナード・ローズ監督が映画化した作品。本作の見どころは、超絶技巧といわれたパガニーニの狂気乱舞する演奏を、現代に生きる天才ヴァイオリニスト、デイビッド・ギャレットが担当するだけではなく、役者としても主演していること。だからよくある吹き替え演奏のようなとってつけた感が演奏シーンには全く見られず、演技と演奏が一体化し、悪魔的とも言われたパガニーニその人をトータルで表現できている。これが作品を通じて、とってもよい味つけになっている。

実際に見ていて、中盤のロンドンでの演奏会シーンまでは完ぺきと思える出来でした。序盤の悪魔のようなプロデューサとの密約から、何か寓話的なモチーフとパガニーニという人をオーバーラップさせ、ロンドンでの演奏会を主催した資産家の娘との淡い恋と、それを裏切るような演奏会前後のパガニーニの狂気の部分がうまく物語に絡まっている。主演のギャレット自身に演技経験はないのだろうけど、上記のように演奏シーンがものすごいので、演技の拙さが隠れてしまうほど、パガニーニ当人と一体化していくのだ。これは凄かった。

しかし、ロンドンの演奏会後から迷走していくパガニーニの人生と同様に、作品自体も迷走を始めていく。映画の後半は演奏家としてというよりは、パガニーニ個人が如何に人生を生きるというところに関して疎かったかというところに焦点が当たっていくのだが、話もうまくまとめ切れていないし、演奏ではなく、個人の演技力というところにギャレット自身の役者としてのかかる負担が非常に大きくなってしまったのではないかと思います。名作「ゴッドファーザー Part3」ではおちぶれるところは最少にし、その前の繁栄を作品全体に力感たっぷりに描くとでいころに名作たる所以があるのですが、この作品は後半を少し長い時間をかけて描いてしまったことで、映画のバランスがすごく悪くなってしまったように思えました。

次回レビュー予定は、「ニード・フォー・スピード」です。

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