9月 09

ノア 約束の舟

「ノア 約束の舟」を観ました。

評価:★★★☆

旧約聖書の有名な逸話”ノアの方舟”を、「グラディエーター」のラッセル・クロウ主演、「ブラック・スワン」のダーレン・アロノフスキー監督が映像化したのが本作。旧約聖書を知らない人でも、”ノアの方舟”のお話はどこかで聞いたことがあるだろう。驕り高ぶり、荒廃した土地を作りだし、争いばかり続ける人間たちに神が怒り、再び肥沃な土地を蘇らすため、一部の動植物たちを除き、大洪水を起こす決意を神がする。洗い流されるのは荒廃した土地だけでなく、野蛮な人間たちも当然含まれている。神と人の子として生を授かったノアに、神はそのメッセージを伝え、穢れなき生き物たちが生き抜けるように、舟をつくることを指示するのだ。

しかし、よく考えれば、この話は非情な話でもあります。背景的には、推し量ることのできない自然への畏怖というもの表現されているのだろうけど、仮にも神の創造物である人間を、作りそこないだからといって、神自身がリセットしてしまう行為をしてしまうわけだからである。そもそも昔から納得がいかないのが、なぜ動植物たちを穢れなきものとして救おうとするのだろうか? 動物たちが言葉がしゃべれないから? 感情を持たないから? 単純にかわいいから?? 突き詰めると、動物と人とを分けているものはなんなのかという哲学的な問いになってしまうのは、これはそもそも旧約聖書のお話を取り上げた宗教的な映画であることもあるのでしょうけどね。

という話は横に置くとして、お話をちゃんと噛み砕けるのであれば、本作は単純にすごくよくできている作品だと思います。洪水のシーンの迫力はもとい、最初のノアと神との対話シーンなど、映像に落とすのが難しいところも、なんなくそれなりのシーンに仕立ててしまうのが、抽象シーンも描くのが上手い、アロノフスキー監督独自の部分でしょう。ラストシーンで家族のそれぞれの選択が描かれるところも、心境と背景がすごくマッチしていて映像としてすごく美しいシーンに仕上がっている。単純にVFXの技術で迫力を出すだけではなく、映像で語らせるということができるところが彼のすごい部分で、「レクイエム・フォー・ドリーム」の頃から、彼の上をいく人は未だにいないと思います。

ただ、どうもお話としてしっくりこない。この映画を見て、いろんな思いが想起されてきます。それだけ、いい作品ということのだろうけど。。

次回レビュー予定は、「STAND BY ME ドラえもん」です。

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