9月 26

渇き。

「渇き。」を観ました。

評価:★★★☆

「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した深町秋生の小説「果てなき渇き」を映画化した作品。監督は、「下妻物語」や「告白」など多彩な映像表現に長ける中島哲也。前作の「告白」がダークトーンを基調としたシンプルな映像で構成されていたけど、本作は「下妻物語」に似た中島監督独特の映像コラージュが楽しめる作品になっている。破天荒ともいえる映像構成をするのは、CM界出身の監督らしいが、それでいて作品の重要なメッセージを際立たせるのが中島監督のすごいところ。前作の「告白」はそういう意味で集大成的な位置づけの作品だったと、今思うと素直に感じます。ただ、それ以前の作品となると、派手な構造の割に物語が小さくまとまりすぎているところがありましたが、本作のようなしっかりした本を使うと、これだけパンチ力がある作品に仕上がるのかと正直ビックリしました。

ただ、すごい作品ではあるんですが、これがとことん救いのないダークミステリーになっているところが若干観ていてゲンナリしてきます。ミステリーなので、失踪した少女の真の姿というのを浮き彫りにしていくストーリーラインは面白いんですが、それに絡む各エピソードの人間の底意地というか、動物的ともいえる醜悪な部分がグロテスクなまでに出てきます。いろんなキャラクターが加奈子という中心人物によって、それこそズダボロになっていく感じは、ちょうど大きな女王蜂の前で、ズタボロになるまで働かされる働き蜂となんら変わりはない。見かけの美しさや愛おしさというものにごまかされ、多くの人間がコテンパンにされる様は決して気持ちのいいものではありません。

でも、よく出来た作品であることも確か。同じ中島監督の「嫌われ松子の一生」もどちらかというと救いがない話でしたが、観終わった後の感じはよく似ていると思います。僕はどちらかというと「下妻物語」や「告白」のような、救いの兆しが若干感じられる中島監督の作品が見てみたい気がします。

次回レビュー予定は、「NO」です。

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