9月 26

NO

「NO」を観ました。

評価:★★★★

長らくチリで続いたピノチェト軍事独裁政権。1988年に世界的な圧力もあり、その軍事独裁政権存続の真意を問う国民投票の内幕を、当時の映像資料を使いながら描いていくポリティカル・ドラマ。ちょうど一昨年前(2012年)の同じような時期に、後にアカデミー賞作品賞に輝いた「アルゴ」という秀逸なポリティカル・サスペンスがあったけど、本作もそれに匹敵するくらい面白い作品でした。国民投票という政治的な出来事に、”Yes”と”No”のそれぞれに分かれる国民を意見を、広告という枠の中で各陣営、どういう風に宣伝していくか、、それに加え、当時は軍事独裁政権という下、圧倒的に”No”側の選挙活動というものは制限また妨害された中での戦いだったことも含め、内幕のいろんな出来事がとことん分かる作品作りになっています。

物語の進め方というところでは、いろんなエピソードの中で脚色されている部分も少なからずあるのかなと思います。ですが、当時の映像をうまく使うことで、いろんな出来事がまさにその場で起こっているようなリアリティを感じることができるのです。これは当時の映像と、劇部分の映像の色彩やトーンをうまく合わせていることや、セットや衣装も計算されたくらいにマッチさせていることに成功の要因があるように思います(この辺りは、上記した「アルゴ」も同じなんですけどね)。興味深いのは、最終的な投票行動に結びつけるため、どのような印象を持たせるCMを作るか、メッセージ性を議論しながら作っていくところでしょう。単純な数分のCMでも、その枠の中でどういうコンテンツを作っていくのか。単純な企業CMとは違い、その命運はその後の国の形をも変えてしまうというプレッシャーの中、製作者たちが魂を込めて作っていく様はとても面白く見ることができました。

僕の好きなところは、全ての結果が出終わった後のラストシーンでしょうか。”Yes”、”No”と違った立場にいても、同じ製作者として、もう一度モノづくりを始めていく。これだけ真摯な姿というのは、現代人の心にも響くところがあるように思います。

次回レビュー予定は、「パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間」です。

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