10月 01

グレートデイズ!

「グレートデイズ! 夢に挑んだ父と子」を観ました。

評価:★★★☆

車椅子の少年と頑固者の父親が二人で挑むトライアスロンと、それに至るまでの過程を描いた作品。一昨年前に、同じフランス映画では「最強のふたり」という車椅子の初老男性と、彼を支える黒人介護士の話が日本でもヒットしましたが、枠組みとしては同じような感じの作品。ただ、「最強のふたり」が身体の障害ということを超越した先の二人の男の友情を描いているのに対し、本作は障害があるということを認知したうえで、トライアスロンという健常者でも困難なスポーツに取り組む親子を描いています。なので、どうしてもレースシーンの随所には、いわゆる障害者が困難なことに挑む羨望の念みたいなところがやや前面に出るのが、少し見ていて閉口するところもなくはないかなと思います。

しかし、トライアスロンにしろ何にしろ、障害者と健常者(こういう表現は端的過ぎてあまり好きではないのですが)が一緒に取り込むスポーツというのは、(映画を観る前は)共同で取り組むことにどういう意味があるのだろうと、正直思っていました。本作の場合は、車椅子の主人公の少年は、スイム(泳ぎ)にしろ、ライド(自転車)にしろ、ラン(マラソン)にしろ、ボートや自転車や車椅子に乗ることしかできない。はた目からみるとどうしてもそうなんですが、実はボートに乗りながらどう声をかけるか、自転車に乗りながらどう体重移動で加速力をつけるか、車椅子に乗りながら何とか前進しようと試みるのか、、それは決して一人では実現できることがない共同であるからこその知恵の出し方や、スポーツへの取り組み方というのがあるんだと実感できます。

本作の映画としての素晴らしい点は何と言っても、映像の美しさでしょう。近作では「ターニング・タイド 希望の海」も、フランス映画として格別の自然美を感じる作品でしたが、「皇帝ペンギン」などの自然ドキュメンタリーをはじめ、美しさをフレームに捉える感覚は、ハリウッド映画には感じることのできないセンスの良さを至る所に感じることができます。特に、冒頭にも描かれるレースのスタートシーンの静けさから、一斉に多くの人間が海に向かっていくシーンは、それこそペンギンが海に飛び込んでいくようなダイナミックさを感じさせられました。映画館で観ることにこそ、映える作品だと思います。

次回レビュー予定は、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」です。

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