10月 08

イヴ・サンローラン

「イヴ・サンローラン」を観ました。

評価:★★★☆

ブランド好きでない人でも名前くらいは知っているであろう、ファッション業界の鬼才であるイヴ・サンローランの生涯を描いた作品。映画をよく観るようになって、およそ15年くらい経ちますが、これほど見事なオープニングを魅せる作品はなかったと思います。ファッションデザイナーを描くにあたって、作品自体がダサくては何ともならない。特に、オープニングタイトルの表示までは完ぺきに作り上げようとしている、作り手の気合いみたいなものを感じることができます。この部分だけを切り取って、ミュージックビデオにもできるんじゃないかと思います。

ファッション界を描く作品としては、一昨年前の2012年にシャネルを取り上げた作品が数多く作られましたが、そのどれもがファッション界を彩る人物を描くだけあって、作品の中身よりも、雰囲気作りを重視していたかと思います。よくブランドものを買いに行くときは(アウトレットは別にして)、そのショップの空気感も、そのブランドをよく表現しているといわれます。昨年まで銀座を徘徊していた身としては(笑)、銀座の各ショップの色合いは店員のスタイルのみならず、ディスプレイの仕方、ライティングの色合い、果てまたお店の設計や調度品も含めて、そのブランドをやはりうまく表現している店が多いと思います。それが、やはり本作にも見ることができて、(そのブランドがスポンサードしているプレッシャーもあるかもしれませんが、)作り手の細やかな作りこみ方というのを、スクリーンから感じることができます。

ただ、作品の中身という意味では、オープニングから序盤のディオールの死から若きスターがのし上がってくるまではうまく描けているものの、その後のイヴの人生の迷走が、そのまま作品の迷走にもつながっているように思います。普通に予定調和ならば、そんな迷走にも足を取られながらも見事に復活してくる様を描くのですが、それを一本調子にしない工夫がかえって作品を混乱させているようにも感じます。サンローランを演じるピエール・ニネのなりきりぶりには感服なのですが、作品としてはもう1つ秀でた部分が感じられなかったのが残念なところです。

次回レビュー予定は、「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」です。

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