10月 07

めぐり逢わせのお弁当

「めぐり逢わせのお弁当」を観ました。

評価:★★★★

インドにはお弁当配達に独自の仕組みがあるらしい。本作は、そのお弁当配達によって結ばれた偶然にまつわるお話。家で作ったお弁当をオフィスに配達する、弁当配達人“ダッバーワーラー”。彼らは誤配することなく、家庭とオフィスととをお弁当でつなぐ存在でもあるが、たった1つの誤配が、ある絆を作っていく。その誤配になったお弁当を作ったのは、主婦のイラ。彼女は仕事に打ち込む夫に対し、再び愛情を取り戻そうと丹念にお弁当作りに励んでいた。しかし、そのお弁当を受け取ったのは、とある会社の会計担当のサージャン。妻を早くに亡くしたサージャンは一人孤独に暮らしていたが、頼んでいた仕出しのお弁当ではなく、イラの愛情溢れるお弁当を受け取り、イラに対してメッセージを送ったことから、二人の人生が微妙にざわめき始めてくる。

インド映画は、ここ最近先日の「マダム・イン・ニューヨーク」も含め、べた褒めする傾向にありますが、本作もいい映画です。本作は、インド映画ながら全く歌や踊りが全く登場しない現代劇になっていますが、歌が登場しないことで、作品自体がいい意味で生活臭に溢れた作品になっています。特に、主演のイラ役を演じたニムラト・カウルの地味ながら実直な演技というのがいいです。それをハリウッドでも活躍するベテラン俳優イルファン・カーンが、しっかりとした演技で受け止めている。主演級の二人ががっぷりした演技をしているからこそ、彼らの周りで華を添えるサージャンの同僚シャイクのエピソードも活きてくるのです。派手さはないものの、こうした味のある演技が作品をとっても素敵なものに仕立てています。

それにラストの終わり方が秀逸。こうした終わり方って、あまり好きじゃない人もいるかもしれませんが、観ている側の想像力を引き立ててくれると思うのです(あまり言うとネタバレになりますが、「サイドウェイ」もこんな類の映画でした)。それも映画の本筋が上記の通りに、しっかりしたものだからこそ成立する。作り手と見る側とのしっかりとした信頼関係の骨組みがあることこそが、この映画自体をすごく大人な空気を感じる、素晴らしい味に仕上げていると思います。

次回レビュー予定は、「イヴ・サンローラン」です。

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