「誰よりも狙われた男」を観ました。
評価:★★★★
「カポーティ」でアカデミー賞主演男優賞に輝き、「マグノリア」、「リプリー」などでも名脇役として活躍していたフリップ・シーモア・ホフマン。46歳という若さで今年2014年2月に亡くなったが、その彼の遺作となったのが本作。僕がホフマンの演技を初めてみたのは、「マグノリア」だと思うのですが、どの作品でも脇役ながら強い個性を放つ俳優といったイメージでした。近年では「カポーティ」や本作なども主役級の役柄を見事にこなしますが、この人は作品に登場するいろんなキャラクターを介在する要(かなめ)的なポジションをやらせると実に上手いと思うのです。本作でも、テロ対策チームのキャップとして動くと同様に、いろんな組織が暗躍して一人の男を狙っている中、その組織間の仲介をこなしつつ、任務にあたっていく男という役柄を卒なくこなしています。アカデミー賞をとった「カポーティ」のときも、カポーティと彼が最期まで固執した死刑囚という二人のやり取りが見事に成立していたからこそ、作品として1本芯が通ったものになっていたと思うのです。そんな仲介役をこなしながらも、決して役柄にも、周りの俳優にも染まらず、作品の中に常に異彩を放っていた存在。稀有な俳優だと思えば思うほど、その演技が二度と見られないと思うと残念でなりません。
さて、作品のほうですが、お話としては、あるテロ組織を支援する団体を巡る情報を持った一人の男に対し、複数の組織が裏で暗躍していくという展開。タイトル通り、誰よりも狙われている、このキーマンとなる男を如何に動かして情報を得つつ、彼自身をも守っていこうというシーモア演じるテロ対策チームのキャップが主人公になっています。一昨年の同じような時期に、「裏切りのサーカス」という時代設定は違えど、スパイものとしては極上な作品が公開されていましたが、同じ原作者ル・カレによる本作も大人の味が漂う素晴らしい作品に仕上がっています。「裏切りのサーカス」はスパイ映画の色合いが強いものですが、本作はスパイというより、大きな組織なら、どこでも起きそうな組織間の摩擦の中で、如何に生き残っていくかに焦点が当たっているように思います。会社でも、学校でもそうですが、組織というのは大きくなると、組織自体が擬人化して、その中にいるメンバーのことはおざなりになってしまう。でも、おざなりでいる一人一人にも、それぞれの人間ドラマがあるという対称的な構図をテロというキーワードのもとに展開されているように感じました。
「イヴ・サンローラン」という映画のレビュー時には、映画の最高のオープニングについて言及しましたが、本作は逆に、映画の終わり方が実にいい。ネタバレになるので詳しくは書きませんが、人間にとってドラマは生きている間終わらないように、映画の中のドラマであっても、この物語に終わりはない、、という描き方って、人の想像力を膨らませるし、実にいいエンディングの仕方だと、個人的には思うのです。大人の男には是非観てほしい、この秋オススメの一作です。
次回レビュー予定は、「THE NEXT GENERATION パトレイバー 第5章」です。