11月 11

不機嫌なママにメルシィ!

「不機嫌なママにメルシィ!」を観ました。

評価:★★★★

この映画は何の映画か、、と聞かれると、答えに窮する映画がときたまあります。概して、このタイプの映画は映画自体は面白いのだけど、何の映画かと一言で表すのが難しいものが多いように思います。本作も、そんなタイプの映画。一言でテーマ説明を求められるのなら、一人の男のマザコンぶりを描いた作品と答えるでしょう。でも、マザコンと一言で表現できるのかというところが、観ていて多少不安に感じるのです。

マザコン(=マザーコンプレックス)とは、『母親に対して強い執着や愛情をもった状態』を表すそうです。僕らの世代なら、日本のTVドラマ「ずっとあなたが好きだった」の冬彦さん(世代が分かっちゃいますね。。)というイメージなのですが、主人公ギヨームが、何もかも母親に依存しているかというと、そうでもないように思えてくるのです。むしろ、母親という存在が疎ましいようにも感じている。自分が自分らしく生きられないという捌け口を母親の存在に求めているように思うのです。その意味では【愛情】は求めていないけども、不満の矛先を母親に対する【執着】というところに位置づけているように感じる。その意味では依存という日本型のマザコン像ではなく、頭から離れない【執着】にあるというフランス的なマザコン像を提示しているようにも思えるのです。

よくも悪くも、人は親から多大な影響を受けます。それは遺伝子的にもという部分もありますが、生き方や性格というところも、人が性格づけられる幼少期にもっとも一緒にいる時間が長いということからも無理はないのかなと思います。でも、そこから独立して生きていくのが、本来の人の姿(これはたとえ、同居という形をとっていても)。特に、大人になってからは個としては、やはり親から独立した生き方を選択しなければならない。愛情や家族というしがらみを超えて、個として脱皮する姿を描いている作品だと思います。

という風に、考え出すとテーマが非常に難解なくらい、僕にとっては内容に共感するのが難しい作品でしたが、映画作品としては一級品だと思います。主人公ギヨームを本人役として演じている主演俳優ギヨーム・ガリエンヌ(もちろん、監督、脚本も含め)の多才さを感じます。それに自分を投影する母親役の二役を卒なく演じるのもさすが。もとは舞台劇というだけあって、それを意識しながら、映画としての奥行きを作っていく演出は見事の一言です。今回は残念ながら作品の内容に共感できませんでしたが、この人の次回作も是非観てみたいと思わせる作品でした。

次回レビュー予定は、「FRANK」です。

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