11月 28

天才スピヴェット

「天才スピヴェット」を観ました。

評価:★★★

3Dの字幕版にて。

「アメリ」のジャン=ピエール・ジュネ監督が挑んだ初3D映画。原作はライフ・ラーセンの有名な冒険小説「T・S・スピヴェット君傑作集」からきている。生まれながら頭脳明晰な天才少年が抱える、親にもいえない苦悩を、ある科学雑誌の授賞式へ向けた旅とともに描くロード・ムービーとなっている。

ジュネ監督といえば、「デリカテッセン」や「ロスト・チルドレン」の独特の映像美で知られるようになり、ハリウッド進出作として「エイリアン4」を手がけ、日本でも大ヒットを記録した可愛い造形とキャラクターがうまく融合した「アメリ」のような傑作もあります。前作の「ミックマック」も劇場で観ていますが、人間の抱える苦悩みたいなものをミュータントのように身体に異様な変形をしたキャラクターや、暗く陰鬱そうな趣味・志向を持った人物像で描くのが、この人ならではなのですが、前作のようなどこから観てもジュネらしい作品とは一線を隠し、本作や「ロング・エンゲージメント」のような万人受けを狙ったマーケット向けの作品というのは、なんかジュネらしくないというか、普通な作品になってしまっているので残念でなりません(中庸なところをうまくバランスをとったのが、「アメリ」なんですけどね)。本作も、初3Dということでエヴェレットが発明する様々な発明品が、スクリーンから抜け出てくるように感じれるのは、ジュネっぽくていいんですが、お話のほうの進め方にもう一工夫欲しかったかな。スピヴェット家の描写と、授賞式前後の描写にやや偏りすぎていて、もう少し旅のシーンでスピヴェットの心情が変化する様を観たかったように思います。

それでも映画の雰囲気はすごく和やかで、中学生以上の青少年でもオススメできる作品。3D公開されている劇場は少ないですが、お話のほうが若干盛り上がらなく感じるので、どうせなら3Dで堪能したいところです。3Dの使い方にはこだわりを感じるようなカメラワークもあるので、2Dだと魅力が半減するように思います。次作では3Dを使って、ファンタジーの世界で、もっとジュネ監督には暴れて欲しいと思う一作でした。

次回レビュー予定は、「紙の月」です。

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