12月 05

トワイライトささらさや

「トワイライト ささらさや」を観ました。

評価:★★★☆

幼い子を抱えながらも、堅実に生きていた落語家が不慮の事故に遭い、ゴーストとして残された妻子の前に姿を現すというハートフル・ファンタジー。ゴーストになる主人公が落語家という設定になっているからか知りませんが、単純に落語家がやる落語というシーンだけでなく、映画そのものも落語調になっているという面白い作品。落語を少しでも見聞きした方なら分かると思いますが、落語のいわゆる噺(はなし)ってやつは、古典から創作に至るまで、落語家が登場人物になりきって、そのお話を紹介していくという体裁を取っていきます。そこでは、噺の登場するキャラクターたちになりきるだけではなく、話の筋を語っていく第三者的な視点もある。この第三者的な視点の役割が、この主人公の落語家が担っているのです。

おまけに、この落語家。よほど妻のことが心配なのか、妻の周りの人たちに乗り移っては妻と話したり、妻を助けたりする。ここに落語のもう1つの要素だった、キャラクターになりきっていく(まぁ、乗り移られているので、そのままじゃんといわれれば元も子もないけど(笑))。その乗り移られた人たちも、決して妻を知らない人たちではなく、シングルマザーで奮闘する妻子を助けようとする人情味溢れる人たちなのだ。落語に、人情はまたよく合う。そう、やっぱり、この映画は落語映画なのだ。

本作のすごいのは、こうした落語映画のようになりながらも、決して古臭い印象を与えないことでしょう。題名のつけ方もセンスがありますが、映画に登場する1つ1つの古臭そうな小道具なり、台詞の言い回しとかにも、繊細なほどの演出で、どことなく可愛く、愛おしいものに上手く仕上げています。ジオラマ風の映像を取り入れるのは、少し過剰な感もしなくはないですが、人の世は、今も昔も人情があってこそという結論には大いに賛同。秋らしい、オシャレな味わいのする作品でした。

次回レビュー予定は、「インターステラー」です。

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