12月 08

インターステラ―

「インターステラー」を観ました。

評価:★★★★★

「インセプション」、「ダークナイト」という傑作を生み出す、クリストファー・ノーラン監督作品。僕は、ノーラン監督こそ、見えないものを見えるように描く杞憂の監督さんだと思っています。「インセプション」だと睡眠(夢)という掴みどころのないものを、「ダークナイト」では悪(それも絶対悪)という狂気を、デビュー作品付近だと「メメント」では記憶、「インソムニア」には眠気(幻想)というところ。この見えないものを描ききる姿は、映画監督の力量というところに直結してくるのですが、ノーラン監督こそ、その分野で才能を十二分に発揮してくれる希少な人だと思っています。そして、本作「インターステラー」でも、その実力はいかんなく発揮しています。

本作の見どころは正直書ききれないくらいあるのですが、一番は4次元空間という私たちの目には見えないものを描くことに挑戦していることでしょう。空間の軸(XYZ軸)と、時間に関しても、今現在というスナップショットしか感じることができない。過去を感じることができるので、3.5次元を感じ取れると書く人もいるでしょうが、ここには可逆性は無視されているので、実質は3.1次元くらいがいいところなのではないかと思います。「インセプション」でも、認知科学的な夢の捉え方というところに固執し、そこでも私たちにすっと入ってくるような描き方をしてくれたので、ノーラン監督は本当にすごいと思います。この他にも、地球での人口増加、食糧問題、相対性理論に、人体凍結と、科学的な話題を確実に取り入れている。これも例えば、「スターウォーズ」のようなエンターテイメントSFとは違う、「2001年宇宙の旅」のようなSFの純主流な系譜を踏襲してくれているところもいいポイントになっています。

というか、科学も高尚な領域になってくると、哲学とか、宗教とか、それを使った人類の生き方というのも考えなくてはいけないのかなと思います。本作でも、滅びゆく地球を前にして、他の星に移住するプランAと、人類がかりに滅びたとしても、凍結させた受精卵を生き残らせるプランBの議論がありますが、ワームホールを利用した長距離飛行と、それに伴う時間の進み方の相違、相対論的な時間の捉え方も、年を取るとはどういうことなのかを考えさせられます。それがラストの部分にも少し触れられるんですが、そうした発達した科学の世界で人がどう生きるかということをもう一度見直してもいいのかなとも思います。

こういう考えさせてくれる映画、嫌いじゃないです。今年一年だけでなく、ここ十数年でも稀に見る傑作だと思います。

次回レビュー予定は、「シャトーブリアンからの手紙」です。

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