12月 30

バンクーバーの朝日

「バンクーバーの朝日」を観ました。

評価:★★★

太平洋戦争以前、遠くカナダ・バンクーバーの地で差別と貧困と闘いながら、カナダ野球で優勝を果たし、2003年にカナダ野球界の殿堂入りを果たした日系野球人チーム”バンクーバー朝日”の活躍を取り上げた作品。監督は「舟を編む」で昨年の日本アカデミー賞に輝き、今日本映画界で一番輝いている石井裕也監督。今年もすでに、「ぼくたちの家族」という秀作を発表しているけど、本作は規模もデカく、やや商業映画の色合いもありますが、こうした作品を石井監督がどうまとめあげていくかが見ものでした。

この作品、とにかく俳優陣が豪華。バンクーバー朝日のメンバーに、妻夫木聡、池松壮亮、亀梨和也、上地雄輔に、勝地諒、彼らを支える周囲の人々にも石田えり、佐藤浩市、貫地谷しほりに、ユースケ・サンタマリア、ちょい役に宮崎あおい、大杉漣に、本上まなみと、誰を主役に据えてもおかしくないメンバーで固めている。さすが400館近く開けるという商業映画の体裁という感じがメンバーを見てもムンムンとしてきます。しかし、さすが石井裕也監督だけあって、石井監督の持ち味というか、演出方法は、こうした大作でもぶれていないように思います。とにかく人の表情を淡々と撮り上げる。下手すると、物語のリズムが悪くなりそうなギリギリのラインで、人の情の詰まったエピソードをしっかりと並べてくる。スポーツものなので、ともすればありがちな、苦労の後の成功物語という枠だけに収まらない人情を魅せる作品になっていると思います。

しかし、この作品、やっぱりアダになっているのは、こうした豪勢なキャスト陣だと思います。もうすべてがメインディッシュになる食材なのに、その食材が前菜やお通しレベルで使われるだけだと、これだけ? もっと使って何かしないの??という気分になってくるのも事実。カナダが舞台となるだけに、エキストラとなる外国人キャスト陣にビッグネームがいなく、役者としての演技力にも、日本人に比べて少々おぼつかないのも物足りないところではあります。このスケール感の映画でも、我が道をゆく演出を見せた石井監督は凄いのですが、彼の力量が十分に発揮できるようなフィールドではなかったかな。いい作品ではあるんですけどね。

次回レビュー予定は、「サンバ」です。

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