1月 19

0.5ミリ

「0.5ミリ」を観ました。

評価:★★★★

昨年(2014年)の第86回キネマ旬報ベスト・テンにて、主演女優賞(「かぞくのくに」)、助演女優賞(「愛と誠」)をダブル受賞し、今、日本女優の間で最も伸びている安藤サクラが、自身の姉・安藤桃子の脚本・監督で挑んだ作品。介護ヘルパーとして、真面目に働いていた女性が、とある事件をきっかけに、少し世界を逸脱した押しかけ介護士として変身していく様を描いている。この映画、キャラクターの造りがとにかく絶妙。とにかく、主人公サワの押しかけ介護士としてのキャラクターがキレにキレていて、お話が結構無骨なんだけど、こういうお話もありかなというように思えてきてしまうのだ。このこと自体は話の持っていき方(脚本の作り)もうまいのかもしれないが、安藤サクラでないと、このサワというキャラ設定が成立しないともいえるくらい、彼女にとっては当たり役とも思える作品になっている。

そもそも介護という世界は必要だということは声高に叫ばれているけど、誰もやりたがらないというのは、本作を観ていてもよく分かる。お年寄りに限らず、人の世話というのはペットなどの動物の世話と違い、(ごはんや糞便の世話だけではなく)、人と人とが触れ合うことでの軋轢がもっともダイレクトにくる仕事だと思います。作品中にも描かれるように、性の問題であったり、お金の問題であったり、信条や家族の問題、人だからというくくりでは収まらない範疇の問題がいっぱい関わってくるのです。普通は、介護=仕事と介護士の人は捉えるので、そういったタブーな領域には関わらずに、あくまで世話に徹するのだけど、サワは冒頭に描かれる事件によって、無理やりに普通の介護士としての仕事ができない状況に追い込まれてしまう。だったら、タブーを破り、家もお金もないという自分の状況までも、世話をするお年寄りに押し付けるという、押しかけ介護に走っていくというというアイディアがすごく奇抜で、面白いのです。

もちろん、こうしたタブーの領域に土足に入ってくる人に対し、最初は人は嫌悪するのが普通。そこを無理やり押し切ってしまうサワの言動に、(被害者となる笑)お年寄りも徐々に心を許していくのは、彼らの根底にも迷惑だけど関わってほしいという潜在願望があるからに他ならない。もうあと少しで人口の1/3が65歳以上になるという日本において、こうした心の隙間を抱えるお年寄りも増えてくるのではないかと思います。家族関係も希薄になり、ましてや第三者であるヘルパーがこうした領域にまで踏むこむこと自体もファンタジーかなとも思いますが、生きるということに対して、重要な提言をしてくれている作品でもあるかなと見ていて感じました。

それにしても、サワのキャラクターはすごくいいので、このままシリーズ化(テレビシリーズでも可)してくれないかなー。

次回レビュー予定は、「96時間/レクイエム」です。

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