2月 12

ドラフト・デイ

「ドラフト・デイ」を観ました。

評価:★★★★

人には運命を左右する瞬間というのがある。プロを目指す野球選手にとっての運命の日というのは、ドラフトの日でしょう。この日本のドラフト制度は1965年に第1回が始まっていますが、もともと参考にしたのがアメリカンフットボールNFLのドラフトだそうです。日本のプロ野球が採用しているドラフトの仕組みとは少し違いますが、やはり選手にとっては人生を左右する瞬間であり、球団にとっては来シーズン以降を占う瞬間であり、ファンにとってはこれからの選手起用や球団の今後を知ることのできる機会でもあります。僕は日本のドラフト中継とかも結構好きで見ていますが(ニュースではなく)、そのワクワク感というか、スリリングな一日を劇映画にしたのが本作になります。

そもそもドラフトって何のためにあるんでしょうね? それには諸説あり、自由競争におこる契約金の高騰を防ぐとか、資金がないチームでも平等に交渉権獲得のチャンスを与えるとかいろいろありますが、僕はドラフト自体もエンターテイメントに位置付けたいというプロスポーツ(プロリーグ)側の意向もあるのかなと思います。ドラフトのない他のスポーツとして、例えばサッカーとかは、ユースから球団独自で育て上げる仕組みを作ったり、選手自体もいろんなチームを直に訪れて、自分にフィットする場を見つけないといけない。もちろん才能のある選手はどこからも引く手あまたなんでしょうが、そうでない選手は自らをアピールしたりすることに躍起になってしまうことに、すごくコストがかかっているのかなと思っています(まぁ、日本のJリーグはまだそこまでいってないんでしょうけど)。ドラフトを入れると、先ほど書いたようなメリットもあるし、期待の新人がどこにいくかとか、他チームとの駆け引きがどう行われるのかという、それだけでも一種のエンターテイメントになってしまう(ニュースにもなりますしね。これは宣伝効果大)。当の本人たちはどこにいくのか運命次第ということは不幸とも思えなくもないですが、逆に自己アピールをしなくても、自分さえ磨きをかければ、実力があればどこかには拾われるはずなので、アピールするコストは少なくて済むのかなとも思います。

映画は、そんなドラフトが行われる一日を時を刻みながら進んでいきます。日本の場合はウェーバー制なので、成績下位のチームから指名していきますが、アメリカは指名権自体も取引が行われ、それに絡んだ現役選手のトレード話もドラフト進行中に行われるというので、どこまでも市場主義的な構造なのは、アメリカらしいところかなと思ってしまいます。よく「ER」や「24」のようなリアルタイムな進行劇になっているのは臨場感満載で手に汗握りますし、それに主人公サニーや周りのスタッフの人間模様が織り込まれてきて、ドラマとしてもかなり骨太な演出になっています。主人公サニーはアメフトチームのGMという設定ですが、同じGMものでもある(笑)「マネーボール」のような裏方人間の苦労みたいなところもリアルに伝わってくるのがいいですね。華やかな舞台の裏で、ドラフトのかけられる選手もたまったものではないですが、このいろんな人たちのドラマが交錯する日を映画作品にして、面白くないはずはないのですけどね。

本作の監督は「ゴーストバスターズ」のアイヴァン・ライトマン。軽やかなコメディを作る人というイメージの人が、こんなリアルタイム進行劇をうまくまとめあげるとは意外でしたが、まだ腕は全然衰えていないところを見せてくれます。

次回レビュー予定は、「さよなら歌舞伎町」です。

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