2月 06

ミルカ

「ミルカ」を観ました。

評価:★★★

インドの短距離界の英雄で、1950年代~60年代のオリンピックやアジア大会で活躍したミルカ・シンの半生を描いた作品。インド映画に関しては、このBLOGでも一昨年前の「きっと、うまくいく」から始まり、「マダム・イン・ニューヨーク」「めぐり逢わせのお弁当」など傑作・秀作がたくさんできていることをご紹介しています。何度も言いますが、従来のインド映画の長尺で、ケバいミュージカル仕立てというスタイルを一新して、それこそハリウッド映画にも席巻するような、腰を据えた映画作りを、インド映画界全体がしていこうとしている姿勢が近作では見えているのです。本作「ミルカ」も、よくある有名人物の伝記映画の路線をしっかりと守り、それこそミュージカルになってしまうような(一部、そうなるような演出もありますけどね。まぁ、これはインド映画なので仕方ない)ところは最小限に抑える工夫をしているのです。だから、一昔前はインド映画というだけで意図的に外していた部分もあったのですが、今はどの作品でも力強さを感じるようになってきました。

それと、インド映画でもう一つすごいのは、本格志向を目指していること。これは邦画と比較すると分かりやすいんですが、邦画でも海外を舞台にする作品(近作だと、「バンクーバーの朝日」とか、「ルパン三世」とか)は海外という名のついた日本を舞台にしている感がどうしても拭えない。ロケーションも海外でやっている例もあるのですが、使っている俳優陣がそれこそエキストラ感満載で、ちっとも地に足がついていないことが多い。それに対して、本作「ミルカ」はアジア大会で東京、オリンピックでメルボルンやローマ、終盤ではパキスタンなど、インド以外を舞台にしているところも多いのですが、1950年代という空気感や、各地で登場する海外俳優陣も(著名な俳優はいませんが)しっかりとした演技を見せている。これは予想ではありますが、監督をはじめ、製作陣がきっちりとロケハンも含め、海外の現地スタッフやキャストに指示を出しているのでしょう。特に、東京などの場面は映像の見せ方も工夫をしてあり、日本人の目から見てもしっかりとした描写で驚きました。

さて、映画本編は予告編で観るような幼少期の悲劇は、映画の後半の場面を主軸に描いていき、前半はローマオリンピックでのミルカの不遇な成績から、成長期をフラッシュバックする形で進めていきます。よく伝記映画では時系列ではなくて、主人公のいろんなエピソードを、それぞれにフラッシュバックしながら進める形式はあるにはあるのですが、本作はその整理がきっちりとされていないので、この演出が効果的に決まっているとは感じれませんでした。特に、中盤の恋模様は少し間延びするし、その合間に挟まるフラッシュバックのせいで物語の前後関係がよく分からなくなっているようにも思います。映像の工夫は上記のように緻密だし、役者の演技はしっかりしているので、この話の整理がしっかりされていないのが残念でならない作品でした。

次回レビュー予定は、「ドラフト・デイ」です。

preload preload preload